経団連は2月29日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会競争法部会(大野顕司部会長)を開催した。米国司法省反トラスト局のマニシュ・クマール次長(刑事執行担当)、レスリー・ウルフ サンフランシスコ支局長、サラ・バーテルズ テクノロジー・デジタルプラットフォーム課弁護士(国際カウンセル)から、米国における反トラスト法の執行をめぐる現状と課題について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
米国司法省は、長年にわたり日本企業とも関係がある反トラスト法の訴追や捜査を行ってきた。経済犯罪は国境を越えるため、最近の自動車部品に関する事件では、高い価格の製品を買った消費者だけでなく、日本企業も被害を受けた。
司法省は、競合他社同士の価格カルテル、市場・顧客の分割、入札談合、独占化行為についても訴追している。価格カルテルは、競合他社間で価格を取り決めることだが、米国では厳密な価格について合意がなくても違法となり得る。例えば、割り引きを行わない合意や、下限価格を設定する行為も違法となり得る。
また、日本の公正取引委員会と同様に、米国でもリニエンシー(課徴金減免)プログラムが導入されている。同プログラムでは、企業や個人が問題行為について政府に申告すると、不処罰の特権を受ける。リニエンシーは、最初に申告した法人や個人にのみ与えられる恩恵であり、早めに自主申告することが重要である。現在、反トラスト法以外の法律に違反する行為でも、最初に自主申告した者はリニエンシーを受けられる。司法省のウェブサイトにFAQが掲載されているので参照してほしい。
企業は、リニエンシープログラムの恩恵を受けるために、反トラスト法違反を防止するためのコンプライアンスプログラムを整備することが重要である。直近の政策変更により、反トラストの問題が発生した時点で、企業がコンプライアンスプログラムを整備していたことを立証できれば、訴追を免れる可能性がある。
加えて、司法省は2023年秋と24年春に、M&A(合併・買収)分野での自主的開示に関するガイダンスを公表した。デュー・ディリジェンス中に買収される側の企業に不法行為が発覚した場合、買収する側の企業が不法行為に関与せず、任意かつ即時に当局に報告すれば、買収の完了後に訴追を免れることができる。また、この政策は反トラスト法違反だけでなく、不法行為に関与していない買収企業が発見した他の違法行為にも適用される。
最後に、司法省は連邦捜査局(FBI)と協力して、企業のサプライチェーンにおける共同行為に対する取り組みを強化している。新型コロナウイルスのパンデミックにより事業の混乱が起きたが、市場が落ち着いてきた今、反トラスト法の違反行為がないか注視している。
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説明の後、司法省のコンプライアンスプログラムの詳細や、司法省による証拠の評価方法などについて意見交換した。
【経済基盤本部】