経団連は3月6日、産業競争力強化法等改正法案(改正法案)について、経済産業省からオンラインで説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 改正法案の概要
世界各国で産業政策が活発に行われるなか、わが国でも、社会・経済課題の解決に向け、経済産業政策の新機軸を検討・実施している。高水準の賃上げなど、足元で生じている潮目の変化を持続的なものとするため、改正法案による国内投資促進等に向けた措置を講じる。
今回の改正は二つの柱から成る。一つは「戦略的国内投資の拡大」である。令和6年度税制改正で新設された税制措置の実施に必要な事項を定める。もう一つは「国内投資拡大につながるイノベーションおよび新陳代謝の促進」である。中堅企業(中小企業者を除く従業員数2000人以下の企業等)やスタートアップへの支援措置等を定める。
■ 新設税制措置
1.戦略分野国内生産促進税制
米国のIRA法を踏まえながら、生産段階でのコストが高い商品への支援として、戦略分野国内生産促進税制を創設した。改正法案において、内外の市場を獲得することが特に求められる商品を産業競争力基盤強化商品として定義したうえで、その生産・販売計画が事業適応計画として認定された場合、計画に基づき自社で生産し、販売した量に応じて、税額控除措置を講じる。
具体的には、電気自動車等、グリーンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体が対象となる。措置期間は事業計画の認定から10年間であり、各年度において法人税額の40%(半導体は20%)まで控除可能であるほか、控除額は4年間(半導体は3年間)の繰り越しが可能である。
2.イノベーションボックス税制
イノベーションボックス税制は、無形資産投資の促進などを目的に、知的財産(知財)から生じる所得を優遇する措置である。欧州では導入が進んでいるが、わが国でもいよいよ創設されることになった。
対象となる知財は、特許権、AI関連ソフトウエアの著作権であり、対象となる所得は、対象知財のライセンス所得、譲渡所得である。対象所得に、当該知財に直接関連する研究開発費のうち国内で自ら行った研究開発の費用(適格研究開発費)の割合を乗じた額の30%が所得控除される。施行後2年間は経過措置として、適格研究開発費の割合を企業単位で算出することが認められる。また、改正法案において、政府が調査し、企業が国内で自ら研究開発したことを確認する規定が新設される。詳細な制度設計は今後検討し、施行(2025年4月1日)までにガイドラインを公表する予定である。
■ スタートアップ関連措置
スタートアップへの資金供給に有効な枠組みである投資事業有限責任組合(LPS)について、投資対象事業への暗号資産および合同会社の持分の取得・保有の追加などを行う。それにより、Web3.0スタートアップや合同会社で起業するスタートアップへの資金供給を可能にする。
スタートアップの人材確保を後押しするため、改正法案において、会社法の特例を措置し、ストックオプションの柔軟かつ機動的な発行を可能とする。具体的には、一定の要件を満たす非公開会社において、株主総会から取締役会に委任できる内容を拡大(権利行使価額、権利行使期間を追加)するとともに、現行は1年間に限られている委任が有効な期間を会社設立後最大15年間に拡大する。
【経済基盤本部】