経団連は3月4日、「仕事と育児等との両立支援セミナー」をオンラインで開催した。企業の人事労務・ダイバーシティ担当者ら約350人が参加した。概要は次のとおり。
■ 取り組み紹介
第1部は、東京ガス人事部人事戦略グループ挑戦と多様性推進チームの宮沢有紀子チームリーダー、TOPPANホールディングス人事労政本部ダイバーシティ推進室兼労政部の馬渕聖子課長、日本電信電話総務部門人材戦略担当ダイバーシティ推進室の田邉直記担当課長が登壇。自社で実施している仕事と育児等との両立支援策を紹介した。発言要旨は次のとおり。
(宮沢氏)
イントラネットのバナーやポスターに情報を掲示し、目に触れる機会を増やすなど、制度を利用しやすい環境づくりに努めている。あわせて、社員が抱える収入減少といった不安に対し、手当を拡充した。
(馬渕氏)
制度の充実に限らず、仕事と育児との両立を目指す社員の「心」を支える仕組みとして「はぐくみプログラム」を実施。制度をまとめた「はぐくみガイドブック」を作成し、制度の周知に当たるとともに、仕事と育児のノウハウを共有している。
(田邉氏)
自律的な働き方ができる「ワークインライフ」の充実に向けて、社員一人ひとりのライフスタイルに合わせて取得することができる「イクパパ休」を導入した。
■ トークセッション
第2部は、第一生命経済研究所総合調査部マクロ環境調査グループの白石香織主任研究員がファシリテーターとなり、事例紹介した3人と四つのテーマに沿って意見交換した。
冒頭、白石氏は、多様な人材が直面する育児・介護を含めたライフイベントにおいて、一律ではなく、それぞれのニーズに寄り添った施策を展開することが今後企業に求められることから、「DE&I」の考え方がますます重要になっていると強調した。
テーマ(1)「男性の育休取得促進」では、育休取得者の体験談を都度発信し取得しやすい環境を整えることの重要性が共有された。テーマ(2)「現場業務に従事する社員に対する両立支援」では、各事業所の労使で施策をめぐり話し合うことの効果について議論が交わされた。テーマ(3)「育児期の社員の周囲の社員に対する支援をいかに得るか」では、職場を支えることを業績や評価に反映する方針とした事例が紹介された。テーマ(4)「仕事と介護との両立支援」では、セミナーを通じて情報を発信するほか、完全匿名のもと、自分の体験談を共有しあう場を設けることの有効性について指摘があった。
質疑応答では、制度利用者を支える周りの社員の気持ちを発信する工夫、グローバルな企業としての取り組み、育児休業を取得した際の手当に関する質問が寄せられ、登壇者から実務的アドバイスがあった。
最後に白石氏が、(1)当事者に対する施策にとどめず、従業員全体のウェルビーイングにつなげていくこと(2)周りの従業員を巻き込んでいくこと(3)ヒアリングやアンケートによりデータを把握していくこと――により、男女が共働き・共育てをしていく環境が整備され、ひいては少子化対策や日本経済の成長の原動力につながると総括した。
【労働法制本部】