経団連の日本アルジェリア経済委員会(佐藤雅之委員長)は2月26日、東京・大手町の経団連会館でアルジェリアの最近の政治経済情勢に関する懇談会を開催した。東洋大学経済学部の吉田敦教授から説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ アルジェリアの政治情勢と権力構造
1990年代の内戦を経て、99年に国民和解を掲げ就任したアブデルアジズ・ブーテフリカ大統領(当時)は、憲法改正により任期制限を撤廃して長期政権を維持してきた。2019年、健康不安で職務遂行が困難となるなか、5期目の大統領選挙に立候補したが、民衆蜂起で辞任した。5期目の立候補が可能となった背景には、大統領と情報・保安部、軍部、国営炭化水素公社ソナトラック、憲法評議会議長によって確立された強固な政治権力構造がある。極論すれば、大統領が不在でも国家統治は可能であり、こうした権力構造は現在も不変である。
■ 炭化水素資源に依存するアルジェリア経済
アルジェリアは、炭化水素が輸出のほぼ全量を占め、経済は資源価格に大きく左右される。最近は資源価格の上昇により、経常収支、財政収支ともに改善しているものの、インフレや失業が深刻である。いわゆる「オランダ病」に陥っているといえる。炭化水素資源の価格上昇によって鉱物資源部門が成長し、同部門の比重が拡大することで労働力等の投入が増え、輸出が伸長する。その結果、マクロ経済が外形的には成長することから、為替レートが上昇して輸入が拡大し、非資源部門の輸出競争力の低下、全体として経済活動の停滞を招く。
■ 中国やロシアとの関係
中国は、アルジェリアをはじめとするアフリカの資源国へ自国企業の進出を加速している。国際的にガバナンスの改善が求められるアフリカの資源国に対して、中国は日本型支援を参考に、内政不干渉の名のもと、請負契約と労務提供を合わせた四位一体型援助モデル(貿易、投資、援助、経済協力=労務輸出)を展開している。これにより、中国はインフラ案件を受注し、資源の安定供給を確保する一方、アフリカの資源国は、中国によるインフラ整備の実績を国民への訴求材料として、両者はウィンウィンの関係を構築している。インフラ整備において、中国企業は期限遵守、日本企業は後世に残る事業を強みとするなど対照的であり、アフリカ側の受け止めを考える必要があるだろう。
また、近年、アルジェリア周辺地域の治安維持を担ってきたフランス軍の撤退を受け、ロシアが同地域への関与を強めている。武器の大半をロシアから購入するなど、アルジェリアとロシアとの関係は深い。今後の動向を注視する必要がある。
【国際協力本部】