経団連は2月5~9日、次原悦子ダイバーシティ推進委員長を団長とし、工藤禎子同企画部会長ら総勢13人から成る女性エグゼクティブミッションを米国・ニューヨークおよびワシントンDCに派遣した。
DEI(Diversity, Equity, Inclusion)はイノベーションの源泉であるとともに、企業のレジリエンスを高めるために必要不可欠である。こうした認識のもと、経団連では、女性活躍をはじめDEIを推進するさまざまな活動を行ってきている。その一環として、今般、多様性を一層重視した取り組みを進めている米国を訪問し、政策当局や国際機関、民間企業との対話を通じて、日本への示唆を得るとともに、経団連や日本企業の取り組みを発信した。あわせて、日米の女性エグゼクティブによるグローバルな交流を図った。
■ 主な懇談先
1.政権・議会関係者
- ナズリナ・バーグジー副大統領顧問、エリカ・モリツグ大統領副補佐官
- ヤング・キム共和党連邦下院議員
2.国際機関
- 国際通貨基金(IMF)=クリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事
- UN Women=カーシ・マディ事務局次長
3.企業幹部
- ブラックロック=ジュード・アブデル・マジェイド シニア・マネージング・ディレクター
- ブルームバーグ=ファティマ・シャーマD&I米国責任者
- オルガノン=シャーロット・オーウェンズ シニア・ヴァイス・プレジデント
4.学術機関・シンクタンク等
- コロンビア大学=デイビッド・ワインスタイン日本経済経営研究所長
- ブルッキングス研究所=ミレヤ・ソリス東アジア政策研究センター所長
- 世界的アーティスト=松山智一氏
■ ミッションの成果
ミッションを通じて得られた成果は、次の5点である。
第一に、日本の取り組みや成果に対する評価である。コロンビア大学主催によるシンポジウムでは、学生、企業、マスコミ関係者ら総勢140人が参加。日本の女性活躍の現状や経済界による女性活躍の取り組みを説明するとともに、各企業の具体的なDEIの取り組み等についてパネルディスカッションを実施し、日本社会全体のポジティブな変革をアピールした。各訪問先では、日本の取り組みや着実な成果に対する評価を得られた。
第二に、米国のDEIの現状の把握である。米国では政治的に二極化した状態が続いており、DEIの推進に対する反発の声もあるが、各界リーダーが揺るぎない信念に基づき、DEIの推進に継続的に取り組んでいる実情がうかがえた。
第三に、データや指標を活用した取り組みの必要性である。米国企業の経営陣は経営戦略上、人事に関するあらゆる数値をダッシュボード化することで課題を可視化し、迅速な意思決定・課題解決を行っているとの言及があった。
第四に、DEIを組織全体に浸透させるためには、リーダー自身がDEIを体現し、実践していかなければならないことである。
第五に、国際機関にとって、ジェンダー戦略の各国への波及を図るうえで、経団連は重要なパートナーとなるとの評価を得たことである。IMFやUN Womenからは、経団連との連携を深めたいとの期待が寄せられた。
国連の報告によれば、各国の取り組みのスピードがこのままだと、ジェンダー・ギャップの解消に300年近くかかるといわれる。日本もこれまで以上に取り組みを加速する必要がある。ダイバーシティ推進委員会では、同ミッションの成果を踏まえ、経済界のDEI推進の取り組みに反映するとともに、新たな価値創造の源泉たるDEIのさらなる推進に向けて、さまざまな会合の開催、多様なステークホルダーとの連携の強化、日米女性エグゼクティブによるネットワークの充実といった活動を展開していく。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】