経団連は2月20日、「グローバルな市場創出に向けた国際標準戦略のあり方に関する提言」を公表した。概要は次のとおり。
1.はじめに~現状と問題意識
国際標準を含むルール形成は、グローバルな市場創出、さらには産業競争力の向上に資する有効なツールである。国際標準化の舞台において近年は欧米のみならず中国もプレゼンスを急拡大している。わが国としても、産学官が緊密に連携し、明確なビジョンのもとで国際標準戦略を策定・実行すべきである。
2.描くべきグランドデザイン
第一に、わが国が国際標準提案を行う際、基調を成すコンセプトとして「Society 5.0 for SDGs」を分かりやすく発信・訴求することが極めて重要である。
第二に、わが国が技術やサービスで競争優位を発揮でき、グローバルな市場創出が期待される「戦略領域」を設定することが求められる。経団連会員に対して実施したアンケート結果を踏まえ、(1)環境エネルギー(2)バイオエコノミー(3)次世代通信技術(4)レジリエンス・防災(5)サービス――といった領域に注力することが重要である。
3.取るべき戦略
第一に、各省庁の施策を総合的に調整し、わが国の国際標準戦略を俯瞰的に策定・推進する「国際標準戦略本部」を設置すべきである。
第二に、ターゲット市場に応じて、欧州や米国、ASEAN、インド等との信頼(Trust)に基づき、政府主導で戦略的にパートナーシップを構築する「仲間づくり」が不可欠である。
第三に、国際標準戦略を実際に推し進める「エコシステムの構築」が欠かせない。
4.エコシステムの構築・強化のための具体的方策
前述のアンケート結果によれば、国際標準の開発における主要課題は、(1)国際標準の重要性に対する社内認識の欠如(2)人材不足――の二つである。
そこで、具体的方策の第一に「企業行動の変容促進」を掲げている。経営者自らが国際標準の重要性を認識し、経営戦略の中心に位置付けるなど、具体的アクション、必要なリソースの投下が重要である。
第二は「人材の確保・育成」である。わが国では標準化人材の不足と高齢化が進行し、近い将来、人材が枯渇すると懸念される。キャリアロードマップの策定・見える化による若手人材の呼び込みのほか、社内および外部人材活用に向けて専門人材プールの構築が欠かせない。専門人材として弁理士の活用も期待される。
また、一企業や一業界では解決困難な社会課題が存在するなか、「業界横断的な連携」も必要である。さらに、「アカデミア人材」の国際標準化活動を適正に評価し、支援を拡大することなども求められる。
5.終わりに~経団連の具体的アクション(提言後のフォローアップ)
同提言を契機として、経営トップセミナーの開催、機関誌『月刊経団連』やイベント等を通じた普及啓発、さらに業界間連携を促進する場を提供するほか、経団連自らも国際標準戦略の推進に注力すべく、委員会の改称や部会の新設を検討する。また、提言事項の実現状況等についてレビューを実施し、必要な施策を提言していく。
【産業技術本部】