経団連と中部経済連合会(中経連、水野明久会長)、東海商工会議所連合会(東海連、嶋尾正会長)は2月8日、名古屋市内で東海地域経済懇談会を開催した。経団連からは、十倉雅和会長、冨田哲郎審議員会議長、副会長らが、東海側は中経連の水野会長や東海連の嶋尾会長をはじめ約180人が参加し、「官民連携でデフレから完全脱却し、『成長と分配の好循環』を実現する」を基本テーマに意見交換した。
経済懇談会の開会あいさつで東海連の嶋尾会長は、人手不足や取引価格の適正化などの課題を解決・克服しながら、ものづくりを中心とする厚い産業集積を維持・強化することで、今後とも東海地域が日本経済を牽引していきたいと述べた。そのうえで、リニア中央新幹線の効果を最大化するためには、鉄道・道路・港などの交通インフラのさらなる整備・強化などが重要と説明した。
続いて十倉会長があいさつし、「日本経済は、継続的な賃金引上げのモメンタム、投資・消費の拡大などに支えられ、持続的な経済成長の実現に向けた力強い一歩を踏み出している」と指摘。「2024年は、この上向きのモメンタムを加速させ、官民が連携して30年来のデフレからの完全脱却を実現する、歴史的な転換の年にしたい」と述べ、「そのために、経団連は『成長と分配の好循環の実現』に全力で取り組んでいく」との決意を示した。
■ テーマ1「活力ある地域づくり」
まず、中心市街地活性化、人口減少対策、地消地産の徹底、観光振興、インフラ整備に関して、中経連・東海連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)各地域の多様なステークホルダーが主体的に地域の課題解決などに取り組む「内発型の地域づくり」を推進すべき。また、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の全国的な機運醸成への協力をお願いする(永井浩二副会長)
- (2)地産地消への取り組みは、農業の振興による地域活性化や国内生産基盤の強化に加え、フードロス対策や輸送による環境負荷の低減などにもつながる(安永竜夫副会長)
- (3)ビジネスで中部圏に来る人が、その前後に観光地を回遊する。こうしたビジネスと観光を融合させた「ブレジャー」を促進すべき(野田由美子副会長)
- (4)リニア中央新幹線の整備を通じた「スーパー・メガリージョン」の形成は、わが国の経済成長とレジリエントな社会構築に寄与すると期待している(東原敏昭副会長)
――との発言があった。
■ テーマ2「産業競争力の強化」
次に、カーボンニュートラル(CN)に向けた水素の活用、産業・地域を支える人材育成について、中経連・東海連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)グリーントランスフォーメーション(GX)の実現には、再生可能エネルギーや原子力の活用に加え、水素やアンモニアの活用が求められる(小堀秀毅副会長)
- (2)リカレント教育の推進に向け、企業のニーズと大学のシーズのマッチング促進や、大学と企業との連携によるプログラム拡充に地域を挙げて取り組むべき(澤田純副会長)
- (3)大学が持つ優れた研究テーマがスタートアップ、そして社会実装へとつながるよう、教育・知的財産・金銭面などにおいてさまざまな改革が必要である(南場智子副会長)
- (4)「2024年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)では、春季労使交渉における経営側の基本スタンスとして、「構造的な賃金引上げ」の実現に貢献していくことが経団連・企業の社会的な責務であると明記した(小路明善副会長)
――との発言があった。
懇談を総括して冨田審議員会議長は、中経連・東海連から説明のあった競争力強化などの取り組みを、新たな雇用の場の創出や地域経済の活性化につなげてほしいと述べた。また、働く人のエンゲージメント向上を通じて労働生産性を高めることの重要性を指摘した。
閉会にあたり、中経連の水野会長があいさつし、「産学官や地域間の連携を通じて、各地域のステークホルダーや資源を『つなぎ』『引き出し』『伸ばす』ことで、相乗効果を生み出し、中部圏の地域力向上に全力で挑戦していく」と締めくくった。
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翌9日、一行は愛知県碧南市のJERA碧南火力発電所を視察。石炭火力発電所でのアンモニア混焼・専焼による低炭素化・脱炭素化の取り組みについて説明を聴いた。
【総務本部】