経団連は12月7日、企業行動・SDGs委員会(吉田憲一郎委員長、西澤敬二委員長、中山讓治委員長)と同企画部会(上脇太部会長、郡司典子部会長)の合同会合を東京・大手町の経団連会館で開催した。外務省国際協力局の日下部英紀審議官から、「SDGs達成に向けて日本が果たす役割」と題して説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 日本の取り組み
2015年に国連でSDGsが採択された後、日本は、内閣総理大臣を本部長、全閣僚を構成員とする「持続可能な開発目標(SDGs)推進本部」と、同本部のもと、NGOや民間部門等の幅広い関係者が参加する「SDGs推進円卓会議」を設置し、その達成に向けて取り組みを推進してきた。
電通の調査によれば、日本におけるSDGsの認知度は91.6%(23年)と過去最高の水準に達している。国レベルではSDGsと「新しい資本主義」は連携し、地方レベルではSDGsを地方創生の旗印として活用している自治体も多い。また、民間部門では、事業を通じてSDGsを実現する方向性が明確化されている。
一方、Sustainable Development Report 2023によると、日本のSDGs達成度は世界21位である。SDGsの17目標のうち、「教育」と「産業と技術革新」は評価されているが、特に「ジェンダー」と「気候変動」が課題として指摘される。
■ SDGサミットの模様
SDGサミットは、SDGs達成に向けた取り組みの促進等のため、国連総会のもとで4年に1度開催される会合である。23年は9月18~19日に各国首脳の参加を得て開催された。岸田文雄内閣総理大臣は19日に出席し、(1)「人間の安全保障」こそが「人間の尊厳」に基づくSDGs達成のカギであるとの考えのもと、日本は国際社会のSDGs達成に向けた取り組みをリードする(2)国際社会全体で低所得国・脆弱国を支援する(3)日本のSDGs推進のための戦略を新しい時代に合わせたものに改定する――とスピーチした。
またアントニオ・グテーレス国連事務総長は、世界のSDGs進捗状況について、「SDGsのターゲットのうち、現在軌道に乗っているものはわずか15%であり、多くの目標で取り組みは後退している」と危機感を表明。飢餓対策や再生可能エネルギーへの移行等、特に緊急性の高い分野の取り組みを加速するとともに、年間5000億ドルの開発資金を途上国のSDGs達成支援に充てる必要性を訴えた。
■ SDGs実施指針改定案の概要
SDGs達成のための中長期的な日本の国家戦略である「SDGs実施指針」について、(1)日本を含む国際社会全体の社会・経済活動のあり方の変容(2)国際社会が直面する複合的な危機(3)若い世代の参画の重要性(4)日本の持続可能な発展と繁栄実現の必要性――を踏まえ、23年末に4年ぶりに改定する(注)。
同実施指針改定案は、(1)持続的な経済・社会システムの構築(2)「誰一人取り残さない」包摂社会の実現(3)地球規模課題への取組強化(4)国際社会との連携・協働(5)平和の持続と持続可能な開発の一体的推進――の五つを重点事項とし、各ステークホルダーとの連携や自発的国家レビュー(VNR)の実施等を進めるとしている。
30年以降のポストSDGsの議論は、24年9月開催予定の国連未来サミットを経て、本格的に始まると予想されており、日本として積極的に参加する必要がある。今回改定するSDGs実施指針をポストSDGsの議論のスタート地点としたい。
(注)12月19日に開催されたSDGs推進本部会合にて改定済み
【SDGs本部】