経団連と四国経済連合会(四経連、佐伯勇人会長)は12月6日、高知市内で「第60回四国地域経済懇談会」を開催した。経団連からは、十倉雅和会長、冨田哲郎審議員会議長、副会長らが、四経連からは佐伯会長をはじめ会員約130人が参加し、「夢なき地域に成功なし~四国の夢・日本の未来」を基本テーマに意見交換した。また、経済懇談会に先立ち開催した昼食懇談会では、櫻井克年高知大学学長から、地域の課題の解決に向けた同大学の取り組みについて説明を聴くとともに、四経連首脳を交えて意見交換した。
経済懇談会の開会あいさつで四経連の佐伯会長は、今回の基本テーマは吉田松陰の「夢なき者に成功なし」との名言を借用しており、四国が目指す将来像の実現に向けて、常識にはとらわれない発想で挑戦していく重要性を述べていると説明した。
続いて、十倉会長は、「サステイナブルな資本主義」の実現に向けて、「成長と分配の好循環の実現」を目指すと表明。グリーントランスフォーメーション(GX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、分厚い中間層の形成、自由で開かれた国際経済秩序の再構築などに取り組むとの決意を示した。
■ テーマ1「地域経済の持続的発展と人口減少社会への対応」
まず、GX、スタートアップ支援、ダイバーシティ&インクルージョン、人口減少問題などに関して、四経連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)GXの実現には、再生可能エネルギーの主力電源化や火力発電の低炭素化に加え、市況や地政学リスクに左右されにくい原子力の役割が重要である(安永竜夫副会長)
- (2)スタートアップエコシステムの活性化には、自分の関心を自分の力で深める教育や、大学の研究テーマをスタートアップに結び付けることが課題である(南場智子副会長)
- (3)各地域の主体的な取り組みの後押しを通じて、地域資源を最大限に活用した「内発型の地域づくり」を推進したい。また、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の全国的な機運醸成への協力をお願いする(永井浩二副会長)
- (4)若者の地域への定着には、質の高いインターンシップなどを通じ、新卒採用における地域の企業と学生のマッチングを高める必要がある(小路明善副会長)
- (5)ダイバーシティ&インクルージョンの推進には、「意思決定プロセスへの女性の参画」「高度外国人材の受け入れの拡大」「意識改革・行動変容」が重要となる(久保田政一副会長・事務総長)
――との発言があった。
■ テーマ2「広域観光やDX推進のあり方」
次に、広域観光やDX推進について、四経連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、
- (1)アドベンチャーツーリズムをはじめとする広域周遊型の観光推進は、国内だけでなく、外国人旅行者にも訴求力を持つものとして大変重要である(菰田正信副会長)
- (2)企業が自ら描く明確なビジョンのもとに、「先ず隗より始めよ」の精神で、従来にない新たな価値の創造に向けてデータ利活用・連携を率先垂範すべき(遠藤信博副会長)
- (3)AIを社会により実装するためには、「AIの積極的活用」「AI活用に付随するリスクへの対応」「わが国におけるAI開発能力の強化」が求められる(東原敏昭副会長)
- (4)人手不足を解決し、中長期的に競争力を維持・強化するためには、デジタル技術を入れ込んだ構造変革や産業基盤の整備を行うことが不可欠である(澤田純副会長)
- (5)農業の担い手不足が顕著になるなかで、生産性を維持・向上させるためには、先端技術を用いた効率的な農業への早期転換が不可欠である(佐藤康博副会長)
――との発言があった。
■ テーマ3「地域経済を支える交通インフラの整備」
続いて、災害対応力の強化などに欠かせない交通インフラの整備について、四経連から問題提起があった。
これに対して、経団連から、災害による被害からの迅速な回復を図るためには、幹線道路のミッシングリンクの早期解消やダブルネットワーク化の推進などが重要である(永野毅副会長)との発言があった。
最後に、冨田審議員会議長が、人口減少下で地域経済を活性化させるには、各地域の基盤産業の生産性向上、GXの推進等を通じた地域での新しい成長産業の創出、多様な働き手のエンゲージメント向上などが必要と総括した。
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翌7日、一行は高知県香南市の技研製作所が有する「RED HILL 1967」を視察。圧入技術を活用した杭打ち工事の方法について説明を聴いた。
【総務本部】