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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年12月14日 No.3617 21世紀政策研究所がシンポジウム「ロシア・中国・中東をにらむ米国の外交と内政」を開催

21世紀政策研究所(十倉雅和会長)は米国研究プロジェクト(研究主幹=久保文明防衛大学校長)の一環として、11月14日にシンポジウム「ロシア・中国・中東をにらむ米国の外交と内政」を開催した。シンポジウム前半では、英国王立防衛安全保障研究所の秋元千明日本特別代表が「ウクライナ戦争~現状と戦争拡大のメカニズム」と題し講演した。後半は秋元氏、久保研究主幹、前嶋和弘研究副主幹(上智大学教授・総合グローバル学部長)の3氏によるパネルディスカッションを行い、緊迫した国際情勢における今後の米国の外交と内政の方向性を展望した。3氏の発言要旨は次のとおり。

■ 秋元氏

秋元氏

イスラエル・ガザ紛争をウクライナ戦争と並行的に論ずることは誤っている。今後の状況次第で大戦になる可能性はあるものの、現状では歴史上の因縁と、テロにより起きた中東地域の紛争といえる。一方、ウクライナ戦争は、大国も小国の主権を制限することなく尊重し、問題が生じた場合にも力による現状変更ではなく国際法によって解決するという、第2次世界大戦後に各国がつくり上げてきた国際秩序の根幹をロシアが壊そうとしているものである。日本の安全保障にもかかわる戦争であるといえる。西側諸国が共有する「ロシアが利益を得るかたちで戦争を終わらせることはできない」という認識が、解決に至る一つの目安になっていく。ウクライナ側は、軍事専用のAIとドローンを軍事システムに導入している。現代の戦争では、人間が戦場にあふれる情報すべてを統括的に処理することはできない。これまで人間が行ってきた分析や評価、さらには次に講じるべき作戦の選択肢の提示までをAIに担わせ、最後の決断のみ人間が行う、という状況にまでなってきている。

米国のウクライナへの支援は、欧州の安全保障に対する米国の協力という意味で重要であり、英国が米欧の懸け橋の役割を果たしている。また、今後のロシア・中国の状況を考えると、英国のインド太平洋への関与が強まってくる。日本は、次期戦闘機の共同開発計画を進めるなど英国との関係を深めている。安全保障協力、対テロ、対サイバー戦、ハイブリッド戦などで広範に協力することにより、日英関係を実質的な同盟関係ととらえていくべきである。

■ 久保研究主幹

久保研究主幹

国際秩序は今、大変な危機にひんしており、歴史的岐路にある。最大の要因はロシアのウクライナ侵略だが、国際社会にとって近年の中国のあり方にも大きな懸念がある。力による一方的な侵略がまかりとおる、成功する、または国際社会からの抵抗を受けない、という解釈が強まると、東シナ海や台湾情勢などを抱える東アジアの国際秩序にも深刻な事態となりかねない。また、米国内の不安定要因、あるいは内向き志向が顕著になっていることも懸念材料である。

こうしたなか、2024年11月に行われる米国大統領選挙の結果が戦争の帰趨に影響を与える大きなファクターである。トランプ氏が大統領になった場合には、米国はウクライナ支援を停止する可能性が高い。第2次トランプ政権が成立する可能性は否定できず、50%程度あると思われる。日本としては、米国の同盟国としての魅力や価値をいかにアピールしていくか、高めていくかが重要である。

■ 前嶋研究副主幹

前嶋研究副主幹

米国では、イスラエルの紛争が発生してからウクライナ問題が後回しになっている。民主・共和両党にとってウクライナ支援の予算を議会でどうまとめていくかがポイントとなっている。大統領選挙が最終的にバイデン・トランプ両氏の争いになれば、激戦州のいくつかの結果により五分五分の争いになると思われる。日本としては、トランプ氏が勝って、米国が北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を真剣に考えるとのシナリオも想定しておかなければならない。大統領選後の政権がどうなろうと、日本は日米の同盟関係と経済関係の強化に努めつつ、米国が日本をないがしろにすることはあり得ない選択であることを、日米韓の枠組み等を通じてしっかりと伝える必要がある。

【21世紀政策研究所】

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