経団連の髙島誠ヨーロッパ地域委員長は9月21日、東京・大手町の経団連会館で、セルビアのドゥブラフカ・ジェドビッチ鉱業・エネルギー大臣と懇談した。ジェドビッチ大臣の発言概要は次のとおり。
■ エネルギー事情
セルビアは、クリーンエネルギーへの移行ならびに脱炭素化の実現を優先課題としている。現在、石炭火力発電の占める割合が約6割と高く、一足飛びで再生可能エネルギーに転換することは不可能である。このため、エネルギー移行期においては、既存の石炭火力発電をより持続可能な方法で利用することが必要である。すでに日本企業の排煙処理技術を活用している例もあり、同じ課題を抱える日本の協力を期待している。太陽光発電や風力発電を中心に、再エネの容量拡大を推進しており、今後3年間で1300メガワットまで増量させる計画である。また、新規の水力発電所の建設も予定している。
■ 重要鉱物の供給
EUは、合成燃料のみを使用するものを除き、2035年までに内燃機関車の新車販売の禁止を決定した。今後欧州では、電気自動車へのシフトが一層進むだろう。セルビアは電気自動車のバッテリー製造に必要なリチウムなどの鉱物資源に恵まれており、先般、EUと重要原材料に関し戦略的パートナーシップを締結したところである。鉱物の加工からバッテリー製造、電気自動車組み立てに至るバリューチェーン全体を国内で展開していきたい。日本企業によるさらなる投資や、プロジェクトファイナンス等の資金面での協力も期待している。
■ 投資環境
セルビアは、引き続きEU加盟に向けて必要な国内改革を行っている。経済面でも、新型コロナウイルス危機のなか、21年には7.5%のGDP成長率を達成するなど、安定した経済成長を遂げている。加えて、対内直接投資残高のGDP比率は他の中欧諸国を上回っており、今後もさらなる成長が見込まれる。すでにEUをはじめ欧州諸国と自由貿易協定を締結しており、周辺市場へのアクセスが容易である。また、法人税率は15%、平均月収は約800ユーロと比較的低い水準であり、コスト面からも競争優位なビジネス環境といえる。今後は、高度なスキルを有する人材を活かし、労働集約的な産業からIT産業などへの転換や、研究開発施設の誘致を図っていきたい。
【国際経済本部】