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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年9月21日 No.3606 21世紀政策研究所がシンポジウム「国際秩序の未来」を開催

21世紀政策研究所の国際秩序研究プロジェクト(研究主幹=田所昌幸国際大学特任教授・慶應義塾大学名誉教授)は8月7日、東京・大手町の経団連会館でシンポジウム「国際秩序の未来」を開催した。同研究所ではかねて、政治経済、科学技術などの多角的な視点から国際秩序の行方を研究してきた。その研究報告として、2050年以降の未来を念頭に置きつつ「科学技術」「中国」「アメリカ」を軸に、あり得る未来シナリオについて同シンポジウムにおいて広く提起した。概要は次のとおり。

■ 研究プロジェクト概要説明「(当たらない)未来予測をなぜするのか?」
(田所研究主幹)

田所研究主幹

このプロジェクトは、視野を少し広げて、いくつかの未来像を考えてみようと試みる一種の思考実験である。また、未来を考えるときに現状に偏重してしまうバイアスに挑戦したいという意図もある。未来の可能性をわからないなりにも考えておくことは、企業が活動するうえでも値打ちがある。

■ 講演1「科学技術と国際秩序の未来」
(鈴木一人 東京大学公共政策大学院教授)

鈴木氏

科学技術は破壊的であり、かつ将来にわたって大きく変化していくため、それらが社会にどのようなインパクトを与えるのかを考えることが重要である。人工知能や通信、輸送、宇宙開発などの技術革新はわれわれに多大な恩恵を与える一方で、格差拡大や政治的混乱を深刻化させる可能性もある。楽観的シナリオとしては、各国が共通の行動規範により革新技術をコントロールすることで、その恩恵を多くの人が享受できる社会が生まれ、平和共存的でルールに基づく国際社会の秩序が形成されると想定し得る。しかし現実には、科学技術の差が国家間の大きな格差につながり、ルール化もできず、軍事的対立や産業寡占の潜在的可能性が継続する不安定な状態に陥ってしまうシナリオも考えなければならない。

■ 講演2「中国と国際秩序の未来」
(渡辺紫乃 上智大学総合グローバル学部教授)

渡辺氏

国際秩序の未来を考えるうえで、中国は挑戦者として非常に重要なアクターである。中国はこれまで、目標を設定し計画を立てそれを絶えず実行し続けてきた。一方で、想定外のことが当たり前のように日々起こっている。そのため、中国の未来を予測することはおそらく他のどの国よりも難しい。これらを念頭に置き、中国の安全保障や経済、内政と外交をみていくことが肝要である。また、グローバル・サウス(途上国)の取り込みは中国の得意とするところでもあり、その行方が未来のキーになってくるだろう。中国を軸にした今後の世界は、(1)米中二極化(2)中国覇権(3)群雄割拠――が想定され得る。それらが現実のものとなったときに日本はどうなるのか、企業はどうするのかを考え、備えておくことが重要である。

■ 講演3「アメリカと国際秩序の未来」
(森聡 慶應義塾大学法学部教授)

森氏

国際秩序の今後に作用する要因として、(1)米中関係(2)地球規模問題(3)第三国――の未来がある。加えて「ブラックスワン・イベント」、つまり予見し得ないような出来事が起こり、それを軸に世の中の流れが大きく変わってしまう可能性があることを強調したい。米中は軍備や産業技術、国際ルール、第三国への影響力などをめぐり、非常に多面的な競争状態にある。そして、気候危機に代表される地球規模問題は、本来は大国間で協力して対策を打ち出し対応すべきところ、その機運は低調のままである。米国のリーダーシップが相対的に低下していくなかで、われわれ日本には、(1)国際的な経済活動空間の再拡大(2)ルールに基づく国際秩序の普及に資する外交――をいかに展開できるかが問われている。

◇◇◇

講演に続き、田所研究主幹をモデレーターとして、講演者3人によるパネルディスカッションを行った。米中を軸としたときに想定される未来の四つのシナリオ(米国優位、中国優位、両者拮抗、共倒れ)に対して挙手を求めるなど、出席者の議論への参加を試みつつ、各視点からみる内政のガバナンスの課題やグローバル・サウスの未来について多角的に討論。盛況のうちに幕を閉じた。

【21世紀政策研究所】

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