経団連は9月12日、提言「2023年度規制改革要望~日本経済にダイナミズムを取り戻す」を公表した。同提言には全会員を対象とする提案調査に基づいて、70項目におよぶ個別要望を掲載している。
時代にそぐわない規制・制度をスピード感をもって見直すことが不可欠であるとの認識のもと、企業の事業活動を抜本的に変えるゲームチェンジャーとなりつつあるグリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)をはじめ、四つの柱に沿って個別要望を整理した(図表参照)。具体的な内容は次のとおり。
1.GX・CE
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーの普及促進とともに、水素やバイオメタンの利用拡大に資する規制・制度改革などを取り上げている。また、サステイナブルな経済社会の実現に向け、サーキュラーエコノミー(CE)にかかる取り組みとして、廃棄物処理の効率化などを求めている。
2.DX
デジタル技術は日進月歩で進化を遂げているため、関連する規制や制度の不断の改革が欠かせない。人手不足が深刻化している運送事業などでの課題解決に向けたデジタル技術の活用や、デジタル完結が進んでおらず、手続きが煩雑である相続関連手続きの改善などを求めている。
3.人の活躍
経済社会の支え手は「人」である。働き手一人ひとりの個性や強みを最大限発揮できるよう、働き手の自律性を重視した柔軟な働き方の一層の推進をはじめ、多様な人材の活躍に資する制度改革を断行し、イノベーションにつなげていく必要がある。
4.成長産業の振興
わが国の産業の国際競争力を強化し、新たな価値の創造により、力強い経済成長を遂げるためには、今後の日本経済を牽引する産業の育成が急務である。とりわけ、「ヘルスケア・バイオ」や「モビリティ」の分野などにおいて、企業が創意工夫を活かせる環境の整備につながる要望を掲げている。
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同提言の審議に先立ち、経団連は8月31日、東京・大手町の経団連会館で行政改革推進委員会(筒井義信委員長、時田隆仁委員長)を開催した。前内閣府副大臣として規制改革に尽力した小林史明衆議院議員から、今後規制改革が果たすべき役割と課題について聴いた。
小林氏は、産業と社会の仕組みを時代に合った技術や社会制度に沿ったかたちに変えるには、規制改革が必要だと指摘。改革すべき事項を社会共通のアジェンダにすること、適切な意思決定者を見つけること、具体的な解決策を提示することの3点がカギであると述べた。
近年の好事例として、オンライン診療の解禁を紹介。改革が進んだ背景には、コロナ禍を契機に、対面診療のリスクが社会共通のアジェンダとなったことを説明した。
また、今後は行財政改革にも注力することを表明し、規制改革については、産業界全体を見渡し、構造的に変革できる改革案を経済界からパッケージで提案してほしいと期待を込めた。
【産業政策本部】