経団連および経団連事業サービス(十倉雅和会長)は、経営法曹会議協賛のもと「第124回経団連労働法フォーラム」を7月12、13の両日、オンラインで開催した(7月27日号・8月3日号既報)。今号では、2日目のテーマ「多様な人材の活躍に向けた環境整備」に関する爲近幸恵弁護士からの報告ならびに質疑応答の模様をLGBTQに関する最高裁判決の評釈も含めつつ紹介する。
■ 育児と両立できる職場環境整備
企業には、男女ともに育児休業等が取得しやすい環境を整えることが求められる。育児休業後の復帰の際は、現実に遂行可能で、それまでのキャリア等を踏まえて職責として適切な業務を検討し、本人に理由を説明したうえで配置することが必要である。
■ 障害者が活躍できる職場環境整備
合理的配慮は、個々の障害者の障害の状態や職場の状況に応じて提供されるもので、多様で個別性の高いものである。そのため、当該障害者と十分に話し合ったうえで、その意向を尊重しながら、措置の内容を決定することが重要である。また、定期的に障害者と面談を実施して当該障害者の状況や意向を把握し、必要に応じ、合理的配慮の見直しが求められる。
■ LGBTQが働きやすい職場環境整備
カミングアウトを強要したりアウティング(注)したりすることは許されない。自認する性別に応じたトイレの使用に関しては、性的マイノリティーの個性の尊重と、多数の男性・多数の女性との職場における調整を常に考える必要がある。
<質疑応答>
質疑応答では、(1)各種情報開示(2)多様な人材(育児・介護休業制度を利用する従業員、障害者、LGBTQ)の活躍に向けた職場環境の整備(3)労働条件の明示に関する改正――などに関する質問が多数寄せられ、討議に参加した弁護士から実務的アドバイスがなされた。
性同一性障害の職員に対するトイレ制限を違法とした「経済産業省事件」の最高裁判決(7月11日)に関する討議では、この問題は社会全体で議論され、コンセンサスが形成されていくことが望まれ、個々の事例に応じて判断することが必要であるとの解説があった。加えて、(1)今の認識では判決内容を理解できるが、政府がセクハラに性自認に関するハラスメントが含まれるとの解釈を示す前の事案であり、最高裁は現時点から本事案を見て判断した感がある(2)トランスジェンダーの状態は多様であり、研修で認識を深めることが大事(3)近くにある女性トイレ使用の制限撤廃要求に応じなかった人事院判定のみ上告を受理し、経産省の対応は不受理としたことの分析が必要――など、多角的な議論が行われた。
(注)本人の同意なく、本人が公にしていない性的指向や性自認に関する情報を第三者に伝えること
【労働法制本部】