経団連は7月7日、東京・大手町の経団連会館で地域経済活性化委員会(永井浩二委員長、小林哲也委員長、月岡隆委員長)を開催した。一橋大学大学院法学研究科の辻琢也教授より、デジタル時代の地域経営の観点から、わが国における行政機能・サービスの改善に向けた地方自治体および民間ベースでの取り組みと課題について説明を聴くとともに、意見交換した。
地方自治体による広域化について、近年、わが国では定住自立圏構想や連携中枢都市圏構想の仕組みに基づいた取り組みが進められてきた。しかし、対象となる事業や予算が限定されており、あまり進捗していない。むしろ、システムのデジタル化のなか、委託されている民間事業者ベースのクラウド上で、自治体間の広域化が進んできたといえる。
他方、約20年前に市町村合併を経験した自治体においては、合併自治体内部において旧市町村間の垣根を越えた一体化が着実に進んできた。大方予想されたとおりに、高齢化と人口減少が進むなかで、合併市町村は職員体制のスリム化を図りつつ、インフラ整備の重点化、必要な社会保障経費の確保により、健全な財政状態を維持している。
こうした点を踏まえると、広域行政を進めるツールとして、市町村合併を再評価する必要がある。しかし、現状においては、中心市および近隣市町村いずれも合併疲れがみられ、さらなる市町村合併に向けた「地域の自発的な動き」はあまりみられない。
また、民間ベースによる行政機能・サービスの広域化については、デジタル化が大きなポイントとなっている。近年のデジタル化の急速な進展により、これまで個別にオンサイトで行っていたことが、クラウド上で共同してできるようになった。
しかし、その取り組みは依然として地方自治体の単位で仕切られている。これに加えて、政策領域ごとの各省庁・局単位による縦割り行政が顕著である。省庁・部局単位の縦割りの標準化が進んでいるために、わが国全体で総合的にデジタル化が進み、世界をリードできる状況になっていない。
これらの点を踏まえると、今後、広域化を進めるためには、民間主導で民間の自由な発意を活かして、自治体単位・省庁単位の仕切りばかりが目立つ連携を改善していく必要がある。国・自治体・企業が一体となって、簡素で使いやすいデジタル化・ネットワーク化を図ることが重要である。
【産業政策本部】