経団連は5月10日、東京・大手町の経団連会館で、アイルランドのパスカル・ドノフー経済再生・公共支出改革大臣との懇談会を開催した。ドノフー大臣は、ユーロ圏財務大臣会合(ユーログループ)の議長を務めており、G7新潟財務大臣・中央銀行総裁会議に出席するため来日した。経団連からは、平野信行副会長(当時)、清水章ヨーロッパ地域委員会企画部会長らが出席した。ドノフー大臣の発言概要は次のとおり。
基本的価値を共有し、ルールに基づく開かれた国際経済秩序にコミットしている日本は、アイルランドの重要なパートナーである。貿易について、日本は欧州連合(EU)域外で第3位の貿易相手国である。日本企業からの直接投資も過去7年間で倍増している。これはアジア太平洋地域最大であり、7000人以上の雇用に貢献している。多くの多国籍企業がアイルランドを高付加価値産業の戦略的拠点としている。そのなかで、日本企業もICT、生命科学、金融といった分野を中心に進出している。今後、デジタルやグリーンといった両国共通の重要課題について、日本企業との連携がさらに拡大することを期待している。また、多数のデータセンターを有する一方、その消費電力の増大が課題となっている。安定したエネルギーシステムとのバランスを図ることが不可欠である。現在、風力発電を中心に再生可能エネルギーを拡充しており、グリーントランスフォーメーション(GX)についても日本との協力を拡大する余地が大きい。
Brexitによるアイルランド経済への直接的な影響はないが、貿易の流れは変化した。これまで英国を経由していた製品を欧州大陸に直接輸送するようになったため、自国をはじめフランス、ドイツ、オランダ、ベルギー等の港での取扱量が増加している。Brexit後の両国関係の安定化を図ろうとしているスナク英国首相の取り組みを評価しており、本来あるべき良好な関係を再び築けると確信している。
また、パンデミックやロシアによるウクライナ侵攻といった前例のない危機に直面したにもかかわらず、経済は堅調なパフォーマンスをみせている。2022年は12%のGDP成長率を記録し、23年は5.6%の予測である。世界情勢が好調な際には、開かれた経済による恩恵を受けるが、反対に危機が起こると悪影響を受けやすい。柔軟に対応できるよう、このようなショックに常時から備えておくことが肝要である。ユーロ圏経済も、堅調な回復をみせており、成長率は上向きに推移している。他方、依然として高止まりが続くインフレへの対処が重要な政策課題であり、ユーログループ議長として、引き続き取り組んでいく。
【国際経済本部】