経団連の日本NIS経済委員会(國分文也委員長)は4月25日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催した。田中克ウクライナ財務大臣アドバイザー(JICA専門家)から、ウクライナ復興事業に関する現状等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
2023年3月、ウクライナ財務省ならびに中央銀行の要望を受け、国際通貨基金(IMF)は、ウクライナに対する総額156億ドル(約2兆円)の財政支援を決定した。世界銀行と欧州委員会はウクライナの復旧・復興に3490億ドル(約50兆円)が必要と推計し、調達に向けた計画を立てているが、今回の支援はその一部として充当される。すでに第1弾の分割融資として、ウクライナに25億ドル(約3400億円)が振り込まれている。財政支援にあたっては、銀行・金融システムの立て直しを含むさまざまな条件が課されている。現在は、ウクライナ経済省や財務省が所管する政策金融機関を介して、支援金を戦略的な分野への投資・融資に回している。
ウクライナ政府では経済省と財務省がメインとなって復興事業を策定している。経済省が復興全体のグランドデザインをつくり、財務省が具体的案件へのファイナンス面をマネジメントする。インフラ省と地域領土発展省を統合したインフラ地域領土発展省は、主にインフラ分野の復旧に関する施策を担当する。
ウクライナ政府に対して、国レベルで戦略を策定する部署の設置を提言したところ、新たに戦略省が設立された。それまでは各省のトップが個別に事業戦略を策定していたため、事業の重複などがあった。戦略省が全体のモデルを管轄することで、各省の事業がより効率的に機能することとなろう。
復興事業の具体的な案件次第ではあるものの、外国企業が参入を検討する場合は、大統領府、財務省、経済省、インフラ地域領土発展省へのアプローチが望ましい。適切なアプローチ先がわからなければ相談してほしい。
実際の復興事業に関しては、現在、各国の専門家を集めて分野ごとに分科会を開催し、討議をしている段階である。ウクライナ政府の具体的な方針はまだ何も決まっていないのが現状である。3月の岸田文雄内閣総理大臣のウクライナ訪問を踏まえ、日本政府も本格的にウクライナ復興に参入する準備をしていると思う。
ウクライナのデニス・シュミハリ首相の23年1月のダボス会議での発言が非常に重要だと考えている。シュミハリ首相は、ウクライナ復興に今後見込まれる投資について、これまでウクライナを支援している国の企業に優遇措置を適用する一方、敵対している国の企業ならびに中立の立場をとる国の企業には優遇措置を適用しない、と述べている。この発言の後、中国の習近平国家主席がロシアとの和平の仲介役を担うと表明したが、ウクライナ政府としては素直に受け止めることはないだろう。これまでのウクライナとの関係から復興事業への参入に苦戦する国も出てくると予測されるなか、日本企業にとっては大きなチャンスになると考えられる。
【国際経済本部】