経団連は4月27日、ウィルマーヘイル法律事務所のジェフ・ケスラー弁護士、ローレン・マンデル弁護士およびジェーク・ラバンド弁護士とオンラインで懇談し、米国のウイグル強制労働防止法(UFLPA)について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ ウイグル強制労働防止法の概要
2022年6月に発効したUFLPAは、新疆ウイグル自治区で製造等された製品や、強制労働への関与を理由として米国政府が指定する事業者の製品などをすべて強制労働によって製造されたと推定し、輸入を禁止すると定める。この推定への反証のハードルは極めて高く、これまで推定を覆した例はない。そのため、輸入禁止を避けるには、「適用可能性審査」がカギとなる。これは、税関国境保護局(CBP)から、強制労働によって製造等されたと推定される前に、当該取引がUFLPAの適用対象外である旨の認定を取得するものである。適用可能性審査にあたり、CBPは、積荷目録、購入目録、製造場所等にかかる文書の提出を求めており、企業はサプライチェーンの上流から下流にわたる詳細な記録を作成する必要がある。また、担当する税関ごとに、審査内容や所要時間にばらつきがあることも問題視されている。しかし、適用可能性審査は、反証に比べて予見可能性が高い。実際、これまで、CBPにより3588件の輸入が差し止められているが、そのうち、1323件がUFLPAの適用対象外として事後的に解放されている。反証を試みているのはこのうち2件のみであり、どちらも依然係争中である。
■ 今後の動向
米国議会は、UFLPAの発効後も、一定量の貨物が中国から米国に輸入され続けていることを問題視しており、CBPに対し審査の厳格化を求めている。公聴会においても、強制労働問題への対処にさらに注力する方針が示されるとともに、企業は責任を持って自社のサプライチェーンを精査すべきだと主張している。
こうした議会の圧力もあり、23年6月のUFLPA発効後1年を機に、エンティティー・リストが改訂される可能性が指摘されている。エンティティー・リストは、米国政府が取引禁止相手に指定する事業者を記載したものであり、国土安全保障省、CBP、米通商代表部(USTR)、商務省、国務省が参加する「強制労働執行タスクフォース」によって作成される。このリストは、行政府の裁量でいつでも改訂可能とされている。
■ 企業に求められる対応
企業としては、国境で荷物が止まることを待っていては遅い。具体的な準備として、第1に、米国に輸出する自社製品の部品レベルから、新疆ウイグル自治区で製造等された物品が使われているかどうか、サプライチェーンを精査する必要がある。第2に、エンティティー・リストの企業と取り引きがあるかどうかを精査する必要がある。例えば、サプライヤー本体がエンティティー・リストに掲載されていなくても、工場の労働者がエンティティー・リストの企業から派遣されているケースや、製造施設の所在地のみを便宜的に他の都市に設定し実際の工場は新疆ウイグル自治区に置いているケースもある。企業には慎重な調査が求められる。
仮に自社が強制労働に関与していないという確信があったとしても、CBPに差し止められないとは限らない。米国に物品を輸出する限り、差し止めのリスクがあることを理解し、サプライチェーンを十分に精査する必要がある。
【国際経済本部】