経団連は3月15日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会ヘルステック戦略検討会を開催した。内閣府健康・医療戦略推進事務局の西村秀隆次長から次世代医療基盤法の見直しについて説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 次世代医療基盤法の概要と現状
次世代医療基盤法は、病院などから提供された医療情報を加工し、研究開発などに活用するために、個人情報保護法の特例法として制定された。同法の目的は、(1)個人情報の保護(2)医療情報の利活用促進――である。残念ながら、これまでの利用実績は二十数件と少ない。これは匿名加工に起因する。個人情報保護のため、医療情報を匿名加工する際には、特異値をはじめ研究などに重要な情報を削除し、データから個人の識別ができないようにしなければならない。これが利活用にあたっての難点となっている。
また、データの真正性に疑問を持つ場合や研究開発の観点から興味深いと思った場合であっても、当該人の医療情報を追加で取得することができない。
■ 法改正に向けて
このような問題に対して経団連や日本製薬工業協会からの指摘も受け、有識者と共に次世代医療基盤法の改正に向けて検討を進めてきた。有識者からは、(1)医療情報の利活用をより促進すべきである(2)公的データベースにあるデータと同法に基づき集約・加工されたデータを連結させるべきである――といった意見が出された。
■ 主な改正点
法改正案の主なポイントとして、(1)認定を受けた事業者が仮名加工医療情報を作成し利用に供する仕組みの創設(2)匿名加工医療情報と公的データベースを連結解析できる状態で匿名加工医療情報を研究者などに提供できるようにすること(3)病院などに次世代医療基盤法に基づく施策への協力を求める規定の創設――が挙げられる。
仮名加工医療情報は、元の医療情報から本人を直接特定できるような名前などの情報のみを削除、もしくは番号に変更された医療情報のことをいう。匿名加工医療情報と異なり研究開発などのための重要な情報を削除しないため、法改正により医療情報の利活用は促進されると思われる。もっとも、個人情報の保護が必要なことから、仮名加工医療情報の提供は国が認定した利活用者に限定する。
また、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)には、ほぼ全国民のデータが入っている。これらのデータは匿名化されているために、連結後のデータも匿名となるが、データ連結によって研究開発に好影響が及ぶと考えられる。
2022年、経団連が公表した「次世代医療基盤法見直しに関する意見」は、われわれにとって励みになった。今後、国会の審議を経て改正法が可決されれば、1年以内の施行に向けてガイドライン等の策定を検討する予定である。ぜひ意見を寄せてほしい。
【産業技術本部】