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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月16日 No.3583 宇宙安全保障をめぐる課題 -宇宙開発利用推進委員会企画部会・宇宙利用部会

片岡氏

経団連は2月21日、宇宙開発利用推進委員会の企画部会(原芳久部会長)と宇宙利用部会(山品正勝部会長)の合同会合をオンラインで開催した。IHI顧問で、日本宇宙安全保障研究所副理事長の片岡晴彦 元防衛省航空幕僚長から、宇宙安全保障をめぐる課題について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ ウクライナの教訓

ロシアのウクライナ侵略は、商用宇宙能力が重要な役割を果たした初めての戦争である。例えば、米国のスペースX社による通信衛星コンステレーション「スターリンク」は、ウクライナ軍の指揮通信と状況認識にとって不可欠になっている。

米国は、ウクライナを支援するために、商用衛星画像情報の調達量を急速に拡大している。米国家偵察局は2022年5月、衛星画像会社3社から10年間にわたり5000億円以上の光学衛星画像を調達する契約を締結した。

一方、宇宙の戦闘領域化が進むなか、脆弱性が課題になっている。ロシアとウクライナの国境に加えて、長距離攻撃を警戒したロシア国内でも、GPS(全地球測位システム)への妨害が検出された。ロシアがウクライナに侵攻する約1時間前には、米国の商用通信衛星にサイバー攻撃が行われた。

データで優位であることが、戦力の優位性に直結する。ウクライナの射撃管理システムは、クラウドでAI(人工知能)を利用して攻撃対象の位置などのデータを処理し、攻撃を開始する。22年5月には、ウクライナは射撃管理システムを使うことで、ロシア軍に完全に勝利した。

わが国としても、ウクライナの教訓を宇宙安全保障構想や宇宙基本計画に反映していく必要がある。リアルタイムな宇宙利用のため、クラウドでAI技術によりデータを処理する戦闘管理システムの開発が必要である。

■ 防衛3文書

政府が22年12月に決定した防衛3文書(国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画)では、宇宙安全保障分野での対応能力を強化する方針が示された。

防衛3文書では、宇宙に必要な部分がほぼ網羅されている。衛星コンステレーションの構築や極超音速滑空兵器の探知・追尾の技術実証などの具体的なプログラムの構築を急ぐべきである。

国家安全保障戦略で、宇宙安全保障構想を取りまとめ、宇宙基本計画に反映すると記載されたことを高く評価している。今後は、宇宙安全保障の強化の方向性をスピード感を持って具現化することが重要である。

■ 宇宙安全保障構想、宇宙基本計画への提言

宇宙安全保障構想と宇宙基本計画では、戦略の目的や目標を明確にすべきである。戦略の目的は、宇宙領域の安定的な利用を促進し、多様な国益へ貢献することである。目的を達成するために、三つの戦略的目標がある。

一つ目は、宇宙利用による安全保障能力の飛躍的な向上である。情報収集衛星の機能を強化し、衛星データをリアルタイムで利用できるようにする必要がある。

二つ目は、持続的かつ安定的な利用を可能とする宇宙領域の維持である。日米宇宙協力の深化が重要であり、宇宙領域の把握などで具体的に連携すべきである。

三つ目は、宇宙安全保障を支える産業基盤の強化と商業宇宙能力活用の推進である。宇宙安全保障などの予算を産業基盤の維持に活用し、先端技術の開発力を強化すべきである。商用宇宙能力を獲得するため、新たな調達制度や契約方式が必要である。

【産業技術本部】

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