経団連は2月20日、イノベーション委員会(安川健司委員長、田中孝司委員長)を開催した。内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の篠原弘道議員、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局の須藤亮政策参与・プログラム統括および植木健司参事官(SIP/PRISM総括担当)から、研究開発とSociety 5.0との橋渡しを担うプログラムであるBRIDGE(注1)について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ PRISMの課題
PRISM(注2)とは、内閣府のCSTIを司令塔とする、官民研究開発投資拡大プログラムのことである。民間の研究開発投資の誘発効果が高い技術領域(ターゲット領域)に各省庁の施策を誘導するため、内閣府が追加の予算を配分することで、領域全体の研究開発を推進する。
2018年度の同制度の創設から5年目を迎えたが、運用面で課題が生じていた。まず、各省庁において、十分には実施されていない施策を推進することをねらいとしていたが、その理由が各省庁から示されていなかった。なかには、各省庁で予算が取れなかった施策を推進することもあった。また、ターゲット領域が各技術分野を幅広くカバーできるように設定されていたこともあって、CSTIが重要な施策の具体的な方向性を示せていなかった。このため、小粒で中心的でない施策が提案されることがあった。
■ BRIDGEへの見直し
こうした課題を克服すべく、PRISMの枠組みを活かしながら、各省庁での研究開発等の施策で開発された革新技術などを社会課題の解決等に橋渡しするプログラムとして見直した。社会実装への橋渡しをするということで、名称もBRIDGEに変更した。CSTIは、重要な施策の具体的な方向性を示すべく、統合イノベーション戦略等に基づき、各省庁の施策のイノベーション化(注3)を推進する重点課題の設定に注力することとした。また、各分野の施策動向にかかわるSIP(注4)のプログラムディレクター(PD)等の有識者、プログラム統括などから横断的に意見を聴くようにした。このほか、産業界のニーズを反映すべく、施策の実施機関には国立研究開発法人だけでなく、各省庁等の公募等により民間も参加できるようにした。
■ BRIDGEの重点課題
23年1月に、ガバニングボードでBRIDGEの七つの重点課題を設定している。例えば、「次期SIP等で抽出された社会実装に向けた各省庁での取り組み」では、23年4月から始まる第3期SIPの課題に関連する各省庁の取り組みの加速・拡充を検討する。
また、「SIP成果の社会実装」では、SIP第2期の成果である「AIホスピタルの実装化のための医療プラットフォーム」の社会実装のために、令和4年度第2次補正予算が措置されるなど、SIPでの研究成果の早期実装を図るべく、各省庁での取り組みを加速・強化する。
このほか、「スタートアップの事業創出」では、SIP等の戦略的な研究開発プログラムの成果を活用したスタートアップによる新市場の創出、早期実装のための事業創出を促進する。
■ 今後のスケジュール
現在、内閣府が各省庁から重点課題に対応した23年度施策を募集している。その際、各省庁は施策の位置付け、施策の概要、出口戦略、事業費、実施期間等を記載した「研究開発等計画」を提出する。各省庁から提出された研究開発等計画について、SIPのPD等の有識者やプログラム統括等が意見を聴取したうえで、BRIDGE評価委員会において事前評価を行い、6月にガバニングボードで実施方針を決定する。その後、各省庁において施策を公募する。BRIDGE施策に関しては内閣府が、また各省庁の公募に関してはそれぞれの省庁が問い合わせに対応する。産業界からも、各省庁によるBRIDGE施策にぜひ積極的に参加してほしい。
(注1)programs for bridging the gap between R&D and the ideal society (Society 5.0) and generating economic and social valueの略称
(注2)public/private R&D investment strategic expansion programの略称
(注3)SIPや各省庁の研究開発等の施策で開発された革新技術などを、社会課題解決や新事業創出に橋渡しするための取り組み
(注4)内閣府のCSTIが府省・分野の枠を超えて自ら予算やPDを配分する、基礎研究から実用化・事業化までを見据えた戦略的イノベーション創造プログラム
【産業技術本部】