経団連は2月15日、経済安全保障推進法の基本指針に関する説明会をオンラインで開催した。
2022年5月に成立した経済安全保障推進法では、全施策に共通する基本的な事項を示した「基本方針」と、分野ごとの「基本指針」を策定することとされている。
政府は22年9月、基本方針と、(1)特定重要物資の安定的な供給の確保、(2)特定重要技術の研究開発の2施策について基本指針を閣議決定し、制度の運用を始めた。
一方、(3)特定社会基盤役務の安定的な提供の確保、(4)特許出願の非公開の2施策については、24年春ごろの運用開始を目指し、現在パブリック・コメントを実施している。
そこで、パブリック・コメント中の二つの指針案について、内閣府から説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。
■ 特許出願非公開基本指針案
特許は基本的に公開されるが、特許出願の非公開制度により、安全保障上拡散すべきでない発明に関しては特許の審査手続きを留保する。これにより、情報流出を防止するとともに、安全保障上の理由で特許出願を自重していた発明について先願の地位を確保できるようにする。
非公開の対象となる発明(保全対象発明)は、政令で指定された特定技術分野の発明のなかから、機微性の程度と、保全指定による産業の発達への影響等を総合的に考慮して決定する。機微性が高い発明とは、将来の戦闘様相を一変させかねない武器に用いられ得る先端技術等である。
保全対象発明は適正管理措置を講じることが求められるが、他の者に発明にかかる情報が流出するおそれがない場合には実施が許可され、「正当な理由」がある場合には開示が認められる。
政府としては、出願人に過度な負担を課さないこと、現行手続きに遅延等の支障を生じさせないこと等に留意する。また産業界等の意見を適切に考慮する。
■ 特定社会基盤役務基本指針案
特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度は、安定的にサービスを提供できない場合に国家・国民の安全が損なわれ得る基幹インフラについて、各省が指定する特定社会基盤事業者が、省令で定める特定重要設備を導入・維持管理の委託を行う場合に、事前に導入等計画書を届け出て、審査を受けなければならないと定める。
制度の整備や運用にあたっては、国家・国民の安全と自由な経済活動のバランスに留意し、規制対象を真に必要なものに限定する。
特定社会基盤事業者の指定基準は、(1)事業規模(2)代替可能性――のいずれかまたはその両方を考慮し、事業ごとの実態を踏まえて定める。
特定重要設備として指定されるのは、機能が停止または低下すると、役務の提供ができない事態を生じ得る設備等である。
特定社会基盤事業者が事前届け出を行う導入等計画書には、特定重要設備の供給者や重要維持管理等の委託先に関する事項等の記載を求める。審査にあたっては、特定重要設備の供給者等がわが国の外部にある主体から強い影響を受けているかなどを考慮する。
政省令の策定にあたっては、経済団体等の意見を十分に聴くとともに、パブリック・コメント制度を活用し、多様な意見を適切に考慮する。
【国際経済本部】