経団連は2月13日、危機管理・社会基盤強化委員会企画部会(工藤成生部会長)を東京・大手町の経団連会館で開催した。防災科学技術研究所(防災科研)の臼田裕一郎総合防災情報センター長から、防災デジタルトランスフォーメーション(DX)の現状と今後の展望について説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言
内閣府が2021年5月に取りまとめた「防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言」では、デジタル防災の新時代に向け、「防災デジタルプラットフォーム」の重要性を強調している。現状では防災アプリやシステムが個別に開発されており、データやシステムの連結が難しい。災害対応という差し迫った状況においてどこまで機能するかが懸念される。そこで、災害時に行政機関等から情報を収集、分析、加工し、対応機関と共有する「防災デジタルプラットフォーム」を木の「幹」としてつくり、さまざまな先端的なアプリケーションが「花」や「実」として社会実装されていくという流れを創出することが重要である。
■ 防災DXに向けた防災科研の取り組み
防災科研では、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第1期に、基盤的防災情報流通ネットワーク(SIP4D)を開発した。SIP4Dは、各省庁・組織が異なる形式で発信している防災情報を収集し、利用しやすい形式に加工・変換して配信することで、防災情報をつなぐ「パイプライン」として災害対応の効果最大化を図っている。また、災害時には内閣府と協働の災害時情報集約支援チーム(ISUT)を立ち上げ、的確な意思決定等に資するよう、被災地で活動している災害派遣医療チーム(DMAT)や自衛隊等のニーズをくみ取り、必要な情報を集約した地図を作成、提供することとしている。
加えて、SIP第2期において開発中の防災版サイバーフィジカルシステム(CPS4D)は、自然・社会の動態をデジタル上に再現するとともに、実際に発生している災害をシミュレーションし、被災状況を推定し、結果を「フィードフォワード」することによって、先手を打って対策を講じることが可能となる。また、個人の状況に合わせた情報の提供、個人が有する情報の動的集約・分析を図る防災チャットボット「対話型災害情報流通基盤(SOCDA)」の開発も進めている。
■ 「官民共創」への取り組み
防災科研は、AIなど先端技術やITインフラを活用して防災・減災にかかる課題を解決するために設立されたAI防災協議会に参加している。同協議会の理事長を務める一方、研究成果の社会実装を目的として民間企業と共同でI-レジリエンス社を設立した。また、22年12月にはデジタル庁の構想に基づき、防災DX官民共創協議会が立ち上がった。
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講演後、官民連携のさらなる促進や被災地における無人化施工の推進、防災プラットフォームが目指す姿等について意見交換した。
【ソーシャル・コミュニケーション本部】