経団連は2月16日、東京・大手町の経団連会館でイノベーション委員会企画部会(江村克己部会長)を開催した。笹川武内閣府大臣官房総合政策推進室長から、日本学術会議法の見直しについて検討状況を聴いた。説明の概要は次のとおり。
■ 見直しの必要性
日本学術会議(学術会議)は、行政、産業および国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、内閣総理大臣の所轄のもと、わが国の科学者の内外に対する代表機関として1949年に設立され、政府・社会への科学的助言等を行っている。
今般の見直しでは、学術会議の会員選考等の透明化およびガバナンス機能の強化を図ることが重要である。主要先進国のアカデミーは、民間団体でありながら国を代表する地位を認められ、国から財政的支援を受けることも含めて、国民に説明できるよう運営されていると思われる。一方、学術会議は、主要先進国で唯一、国の機関であり、法律に基づいて国を代表する地位が認められ、経費も全額国費で賄われている。したがって、国民から理解され、信頼される存在であり続けるためには、選考プロセスの透明性を高める必要がある。
科学的助言を行う機能を強化する必要がある。国際社会が直面する地球規模の課題、新興技術と社会との関係に関する課題など、政策立案に科学的な知見を取り入れていく必要性が高まっている。このため、学術会議には、中長期的で俯瞰的、分野横断的な課題に関し、政府等と問題意識や時間軸等を共有しつつ、時宜を得た質の高い助言を行うことが期待される。この点については、政府等への助言を公務として行う国の機関である以上、受け手側の問題意識、時間軸や現実に存在するさまざまな制約等を踏まえながら審議する必要があり、それが結果的に助言の実効性の向上につながると考えている。
■ 見直しの概要
学術会議の会員等の候補者について裾野を拡大し、会員構成の多様性を充実させるため、会員等以外の外部の第三者にも推薦を求める。学術会議自身も、経済団体等に対して、候補者の情報提供を求め始めたが、法的な枠組みを設けて安定的に運用する。
また、選考諮問委員会(仮称)(注1)を学術会議に設置し、会員等の候補者の選考に関する規則や選考について意見を述べられるようにすることで、現行のコ・オプテーション方式(注2)を前提としつつ、選考プロセスの透明性を高める。委員は一定の手続きを経て会長が任命し、候補者の内閣総理大臣への推薦も従来どおり学術会議が行う。このため学術会議の独立性を損ねるものではなく、むしろ国民から理解され信頼されるための重要なツールになると考えている。
このほか、活動・運営の継続性や透明性を確保するため、中期的な事業運営計画を自主的・自律的に定めて公表すること、毎年度、運営状況について自己評価を行い、結果を公表すること等も検討している。
■ 経済界への期待
今般の改正を通じて、会員等の選考をより透明なものとするとともに、会員等の候補者につき裾野の拡大に取り組む。経済界も候補者の推薦に協力してほしい。
(注1)会員および連携会員以外の者で、科学や科学の研究環境等についての広い経験と高い識見を有する者で構成され、委員は、学術会議会長が一定の手続きを経て任命することを検討している
(注2)現会員により会員を選出する方式
【産業技術本部】