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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2023年3月9日 No.3582 データ連携の実現に向けた課題と展望 -デジタルエコノミー推進委員会企画部会データ戦略ワーキング・グループ

日本の産業競争力強化やSociety 5.0 for SDGsを実現するためには、データ連携による価値の協創が不可欠である。デジタルエコノミー推進委員会では、わが国企業によるデータ利活用、データ連携における障壁を洗い出すとともに、新技術の活用を含めた解決策を見いだすべく検討を進めている。そこで、同委員会企画部会データ戦略ワーキング・グループ(若目田光生主査)は2月14日、オンライン会合を開催し、インターネットイニシアティブの谷脇康彦副社長から、データ連携の実現に向けた課題や展望等について説明を聴くとともに意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ データ駆動社会とは

デジタルトランスフォーメーション(DX)をめぐる現状を概観すると、全社戦略に欠け、既存ビジネスモデルの枠内にとどまる日本と、全社戦略によって新規事業の創出を目指す米国との違いが顕著である。各国共通の課題である人材不足に加え、日本では改革の目的が不明確で、米国等に比してデータの活用が大幅に立ち遅れている。

わが国が目指すべきデータ駆動社会は、現実世界でIoTを通じて収集した大量のデータをサイバー空間でビッグデータとして蓄積、AIで解析した後、社会課題の解決や新たな価値の創造に資するべく、再び現実世界に還元するという循環を生み出すものである。

■ データ駆動社会に適応した社会制度改革を

データ駆動社会の中核を担うデータには四つの類型がある。すなわち、(1)国や地方自治体が提供するオープンデータ(2)医療や教育等の分野における暗黙知の蓄積による「知のデジタル化」(3)センサー等でやり取りされるM2M(Machine to Machine)データ(4)パーソナルデータ――である。これらをデータ流通連携基盤上で蓄積・解析し、異なる領域間の協働につなげる必要がある。

しかしながら、わが国における既存ルールは、限界費用(注1)がかからず、競合性(注2)がなく、ネットワーク効果(注3)が高い、というデータの特性を前提としていない。また、世界的にみても、少数者にデータが集中し、データ流通が競争的ではないという構造的な問題も大きい。データが国民の行動変容や新たな富を生み出す時代にあって、データ駆動社会に適応した社会制度への改革が求められる。

■ データ連携の実現に向けて

これまで行われてきたデータ連携は、行政、医療、教育等の各領域に閉じたものであった。今後は領域を超えたデータ連携を進める必要がある。それぞれのデータが接続され、一つのシステムのように稼働することで、Digitization(産業の効率化)ではなく、Digitalization(産業の変革)が可能となる。

今後、わが国がデータ連携を進めるうえでは、(1)データ共有の促進に向けた制度の議論(2)トラストサービスの加速(3)都市間データ連携の環境整備(4)データセキュリティーの強化(5)国際データ連携協定の整備――といったさまざまな課題に対処すべく、俯瞰的かつ総合的な戦略を描く必要がある。

(注1)生産量を増加させた時に追加でかかる費用

(注2)ある者が消費すると、他の者が消費できなくなること

(注3)利用者が増えるほど、利用する価値が高まること

【産業技術本部】

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