経団連は12月15日、「経団連活動に関する四半期報告会」をオンラインで開催した。久保田政一副会長・事務総長が、2022年度の事業方針「サステイナブルな資本主義を実践する」で掲げた9項目のテーマに関する政策動向・経団連の取り組みを報告した。全国から300人を超える会員が参加した。概要は次のとおり。
(1)自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けては、9月に提言「自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けて」を公表し、G7を中核とする「自由貿易投資クラブ」の立ち上げを提唱した。23年春には、G7広島サミットに先立ち、経団連としてB7東京サミットを主催する。こうした機会をとらえ、各国首脳への働きかけを続けていく。
(2)新型コロナウイルス対策と社会経済活動の両立、出口戦略について提言し、政府の水際対策の緩和等の実現に結び付けてきた。また、11月には、日本版CDC(米疾病予防管理センター)を中心とした政府の司令塔機能のあり方等を提言しており、強靱な医療提供体制の構築を働きかけていく。
(3)5月に提言「グリーントランスフォーメーション(GX)に向けて」を取りまとめ、政府の「GX実行会議」の設置、同会議における50年カーボンニュートラルに向けたロードマップの策定、原子力の利活用方針の明確化などを盛り込んだ「GX戦略」の検討・策定につなげた。今後10年で150兆円規模を見込むGX投資のうち、「GX移行債」によって20兆円規模の政府資金を調達することも検討されている。今後も官民連携のもと、経済界としてGXに果敢に挑戦していく。
(4)コロナ禍によって浮き彫りとなったデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れに対し、経団連は、デジタル臨時行政調査会による規制の見直し等を後押ししてきた。また、新たな先端領域であるweb3について提言「web3推進戦略」を取りまとめた。引き続き、DXの加速に向けた取り組みを行っていく。
(5)10月に、提言「産業技術立国への再挑戦」を取りまとめ、税制、エネルギー、人材など重要産業・技術の競争力強化に資する政策について提言した。バイオ、宇宙、半導体をはじめさまざまな分野で補正予算による政策支援がなされるなど成果を挙げている。今後もモビリティー産業の振興等も含め、働きかけを続けていく。
(6)提言「スタートアップ躍進ビジョン」をもとに関係各所へ働きかけた結果、約120の提言項目のうち約半数について、すでに政府・関係省庁等での対応や検討が進んでいる。引き続き、ネットワーキングを含め、経済界全体でスタートアップ振興に取り組んでいく。
(7)わが国経済の生産性向上に不可欠である成長産業・分野への円滑な労働移動に向けて、雇用のマッチング機能の強化等を働きかける。あわせて、中小企業における賃金引き上げに向けた環境整備として、「パートナーシップ構築宣言」を通じた労務費等の取引価格への確実な転嫁を会員各位に呼びかけていく。
(8)経団連の「地域協創アクションプログラム」と軌を一にする政府の「デジタル田園都市国家構想基本方針」等を踏まえて、官民連携のもと、地域経済・社会の活性化に取り組んでいく。
(9)全世代型社会保障の構築に関しては、分厚い中間層の形成に向けて、現役世代の負担軽減に資する改革の実現等を訴えかけ、その内容が政府方針に反映された。また、23年度の税制改正については、研究開発税制の拡充・維持、スタートアップ振興税制の拡充等、経団連の提言事項が実現した。なお、防衛力強化のための財源措置として、税制措置による負担の過半を法人税が占める方向となった。政府・与党には、企業による賃金引き上げと投資拡大のモメンタムが失われることのないよう、令和6年度税制改正以降での対応を含めて、政策面での強力かつ継続的な後押しを求めていく。
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なお、サステイナブルな資本主義の確立に向けて、上記に加え、社会性の視座に立脚した企業行動の実践を一層促進する観点から、12月には、「企業行動憲章 実行の手引き」を改訂した。経団連は、今後もサステイナブルな資本主義の実践に向けて、積極的な政策提言や関係各所への働きかけを行っていく。
【総務本部】