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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月24日 No.3568 提言「web3推進戦略」を公表

経団連は11月15日、「web3推進戦略 ~Society 5.0 for SDGs実現に向けて」を公表した。提言の概要は次のとおり。

■ Society 5.0 for SDGs実現を目指すためのweb3活用

web3(注1)と呼ばれるインターネットのあり方は、データ保有の分散等を通じて経済社会に広範な影響を及ぼし得る。各国政府・企業はweb3等に関する政策や取り組みを矢継ぎ早に展開しており、web3を取り巻く環境は刻一刻と変化している。

こうしたなか、わが国では各種規制によって、web3関連企業が登場・成長しにくい。「まずやってみる」精神で、リスクにも向き合いながらweb3の活用を進める必要がある。また、人々のウェルビーイング向上に寄与することを前提として、Society 5.0のアーキテクチャーにweb3関連技術を組み込む可能性も模索しながら、Society 5.0 for SDGsの実現に貢献するためのweb3活用の絵姿をより具体的に示していくことが求められる。

■ web3先進国への変貌に向けたステップ

わが国が「web3鎖国」を脱し「web3先進国」として各国をリードするためには、(1)web3関連事業が「できる」こと(2)各国の企業に「選ばれる」こと(3)SDGsに「貢献する」こと――が不可欠である。これらを達成するために、次のステップを踏むことが必要である。

まず、スタートラインに立つためのステップ0として、現行の法制度を最低限見直す。その後、ステップ1として、web3市場を活性化する。続くステップ2においては、web3を徹底的に活用した産業を確立すべく、各種ルール・規制のあり方を示す。こうしたステップを経て、最後のステップ3、すなわち「web3先進国の実現」が見えてくる(図表参照)。

図表:web3先進国への四つのステップ

■ 直ちに取り組むべき施策

以上のステップを踏むにあたって、三つの施策に直ちに取り組むべきである。

第1に、web3時代に即した税制の見直しである。わが国では現状、暗号資産を保有していると、キャッシュフローを伴う実現利益がない場合でも課税されるため、web3関連事業を進めるうえで非常に大きな障壁となっている。そこで、web3時代に即した税制措置の第一歩として、例えば自社が発行し保有する暗号資産にかかる期末時価評価課税について、所要の見直しを行うべきである。

第2に、暗号資産へ投資しやすい環境を整備することである。ベンチャーキャピタル等の多くは、投資事業有限責任組合契約に関する法律(LPS法)のスキームに則ってスタートアップ等へ投資を行っているが、同法には投資対象としての暗号資産が明記されていない。そこで、web3関連企業や投資家を含むエコシステムを活性化するため、LPS法を改正し、LPSによる暗号資産への投資を可能とすべきである。

第3に、暗号資産の流通促進である。現状、暗号資産交換業者が暗号資産を新規で取り扱う際には、自主規制団体である日本暗号資産取引業協会(JVCEA)による事前審査等を経る必要があり、時間を要している。事前審査と事後規制のバランスを取りつつ、利用実体を踏まえた適切な規制のあり方を検討すべきである。

■ 今後求められる関連分野の施策

関連分野であるNFT (Non-Fungible Token、非代替性トークン)(注2)、DAO (Decentralized Autonomous Organization、分散型自律組織)(注3)、メタバースについても、今後の活用に向けた施策が求められる。とりわけメタバースについては、Web1.0や2.0で展開されている現状に鑑み、基本的にはweb3と峻別して議論する必要がある。また、将来的には、メタバースへの過度な依存をはじめさまざまな課題が出てくる可能性も指摘されている。事業者の自主的取り組みを支援するとともに、どこまで倫理的に許容可能かといった点も含め継続的に議論し、社会全体で規範を形成していくことが不可欠である。

■ おわりに

経団連としても、ステークホルダーの合意形成に資する対話への参画等を通じ、web3先進国への変貌に向けたわが国の取り組みに積極的に貢献していく決意である。

(注1)ブロックチェーン技術を活用したインターネットのあり方。「Web3.0」等と呼称されることもある

(注2)ブロックチェーン技術によって真正性を担保されたデジタルデータ

(注3)ブロックチェーン技術を用いて、意思決定の承認等を自動化した組織

【産業技術本部】

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