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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年11月24日 No.3568 提言「司令塔機能を強化し、新たな感染症に備える」を公表

経団連は11月15日、提言「司令塔機能を強化し、新たな感染症に備える」を公表した。

新型コロナウイルスの発生から約3年が経過した今、得られた教訓を活かして危機管理体制を強化し、次なる感染症に備えることが必要である。こうした観点から実施すべき方策を整理し、関係方面へ建議した。提言の概要は次のとおり。

1.統括庁を軸にした政府司令塔機能の強化

今般のコロナ禍では、感染症対策にかかる司令塔の機能不全が顕在化した。司令塔機能の強化に向けた内閣感染症危機管理統括庁(仮称)の設置に対し、以下を求める。

(1)司令塔機能の実装
  • 社会経済活動への影響を最小限に抑えるための調整
  • 感染症対策のエキスパート育成
  • 必要な権限(例=勧告権)の設定、緊急時における地方自治体への直接的な強い指示
(2)感染症対策に関する環境整備
  • 医療物資の備蓄、増産にかかる柔軟な規制対応、物資確保の状況把握
  • 医療機関と患者の受け入れのミスマッチ解消
  • 水際対策の意思決定迅速化
  • ワクチン接種の拡大、国民への情報提供の充実

2.日本版CDCを軸にした研究開発の促進

図表1:日本版CDCのあるべき姿(イメージ)

政府は、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターを統合して新たな専門家組織、いわゆる日本版CDC(疾病予防管理センター)を設置することとしている。感染症対策を科学的知見によって支えるため、同組織に、高度な事務局機能、政府から独立した立場、感染症対策にかかる組織・人材のネットワークを求める(図表1参照)。具体的に果たすべき役割は以下のとおり。

(1)公衆衛生・感染症対策のサポート
  • 必要なデータの一元的収集・分析、リスク評価
  • データ標準化、利活用にかかる法制度整備、データ分析にかかる人材育成
  • 公衆衛生、医学等の専門家の現場への派遣
(2)研究開発・生産基盤の確保
  • 治療薬やワクチンの研究開発の方向性提示、政府による研究開発の推進と新たな技術の育成
  • 調達保証による産業基盤の安定化、創薬ベンチャーへの育成・支援、医薬品やワクチンの承認プロセスの合理化
  • Gaviワクチンアライアンス(注)の共同購入を視野に入れたワクチン開発
(3)戦略的研究開発予算の確保
  • 省庁横断的かつ長期にわたる予算確保、実用化支援、積極的な広報活動による国民の理解醸成

3.次なる感染症に備えた体制整備

これまでの感染拡大への対応において浮き彫りとなった課題について、以下の対策が必要である。

(1)私権制限のあり方の見直し
  • 制限のあり方に関する議論、事後検証の仕組みの導入
  • 対策の内容等の合理性に関する検討、必要に応じた法制度整備
(2)組織運営の体制整備
図表2:ICSに基づく組織体制
  • ICS(Incident Command System、米国で標準化された災害現場や事故現場における指揮調整システム)に倣った組織構築(図表2参照)、EOC (Emergency Operation Center、緊急事態において情報収集・整理統合のハブとして機能する設備)導入による危機管理の円滑化
(3)医療デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
  • マイナンバー制度の活用、医療データのデジタル化・標準化、医療情報の共有
  • 情報システムの構築による感染者の情報収集・集計・連携の効率化
  • オンライン診療の普及

4.おわりに

次の感染症発生まで、十分な準備時間があるとは限らない。一刻も早い関連法案の成立と、前倒しでの体制整備が必要である。

(注)低所得国の予防接種率を向上させることにより、子どもたちの命と人々の健康を守ることを目的として、2000年にスイスで設立された官民連携パートナーシップ

【ソーシャル・コミュニケーション本部】

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