経団連自然保護協議会(西澤敬二会長)は、10月13から15日の3日間、韓国・済州で開催された「IUCN(International Union for Conservation of Nature、国際自然保護連合)(注1)リーダーズフォーラム」(IUCN、韓国環境省、済州道の共催)に参加した。同フォーラムは、自然保護に関する世界最大のネットワークであるIUCNが、ダボス会議の生物多様性版として、シリーズ化を目指して企画したもの。2022年12月の生物多様性条約第15回締約国会議(CBD・COP15)において、30年までの国際目標となるポスト2020生物多様性枠組(GBF=Global Biodiversity Framework)の採択が目指されるなか、1回目となる今回は、その機運を醸成するとともに、ネイチャーポジティブ(NP)(注2)、自然に配慮した経済と社会の構築に向けて議論した。エリザベス・マルマ・ムレマCBD事務局長ほか、ビジネス、国連機関、政府、NGOなど、さまざまなリーダーが世界中から参加した。
西澤会長はオープニングセッションに登壇するとともに、韓国経済界が企画したビジネスセミナー「ESG for Nature」でゲストとしてあいさつした。オープニングセッションでは、(1)企業トップが生物多様性分野を自分事ととらえ、再生力のある地球システムに貢献すること(2)NbS(Nature-based Solutions、自然に根ざした社会課題解決)の重要性、とりわけ生態系を活用した防災・減災(Eco-DRR=Ecosystem-based Disaster Risk Reduction)に今後さらに注力することの必要性(3)リーダーズフォーラムを起点に、経済界がスピード感のあるアクションを起こすことへの期待――を述べた。また、ビジネスセミナーでは、環境を担当する自分を含む3人の経団連幹部が、グリーントランスフォーメーション(GX)、サーキュラーエコノミー(CE)、NPを一体的な取り組みとして、経営に統合していくための議論を開始したと披露。日本経済界にNPに向けたムーブメントを起こす意欲を述べた。韓国経済界との今後の対話と連携の継続も伝え、歓迎された。
さらに、ブルーノ・オベルレIUCN事務局長、ムレマCBD事務局長とそれぞれ個別の会談を実施した。会談では、経団連自然保護基金30周年の新方針として、愛知目標の後継となるGBFの実現に貢献することなどを説明した。オベルレ氏からは日本でのNP普及のためのシンポジウムの開催、ムレマ氏からは日本のこれまでの貢献を踏まえたうえで、さらなる支援の検討について、それぞれ要請があった。
経団連自然保護協議会では引き続き日本の経済界の取り組みを内外に発信するとともに、NPに向けた国際的なネットワークの強化を図っていく。なお、12月のCBD・COP15には、西澤会長を団長としたミッションを派遣する。
(注1)世界的な協力関係のもと1948年に設立された、国家、政府機関、非政府組織で構成される国際的な自然保護に関する世界最大のネットワーク。本部はスイスのグラン。代表的な活動として、ワシントン条約の議論への科学に基づく情報提供、ラムサール条約の事務局、絶滅のおそれのある生物リスト(いわゆるレッドリスト)の策定等がある。経団連自然保護協議会は96年に経済団体として世界で初めて会員となった
(注2)生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せること
【経団連自然保護協議会】