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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2022年10月20日 No.3563 十倉会長が「Gゼロサミット2022」であいさつ

経団連の十倉雅和会長は、9月28日に都内で開催されたユーラシア・グループ主催「Gゼロサミット2022」で、同社のイアン・ブレマー社長らと共同議長を務め、開会あいさつをした。十倉会長とブレマー氏の発言要旨は次のとおり。

■ 十倉会長「サステイナブルな資本主義の実現と国際協調」

十倉会長(提供=ユーラシア・グループ)

行き過ぎた株主資本主義や市場原理主義がもたらした問題を解決するには、社会的視座を考慮して成長を目指す「サステイナブルな資本主義」を目指さなければならない。持続可能な経済成長を実現するには、気候変動や新型コロナウイルスのようなグローバルな課題を解決するための国際協調が欠かせない。

しかし、国際協調という言葉は後景に退いてしまっている。ロシアによるウクライナ侵略という、国際秩序の根幹を揺るがす事態に直面するなか、わが国としても、これまで以上に安全保障を重視し、防衛力を抜本的に強化する必要がある。また、経済安全保障の観点から、サプライチェーンの強靱化等に取り組むことが必要である。

こうした状況のなかで、「自由は自由貿易よりも貴い」との指摘もある。しかし、貿易や投資を通じて繁栄を遂げたわが国としては、自由貿易も大変重要である。安全保障の観点から経済活動を制限する場合も、対象は必要最小限に絞り込み、可能な限り自由な経済活動ができる環境を維持しなければならない。

■ ブレマー氏「世界の現状」

ロシアによる侵略を受けてもウクライナは存続するが、米欧の軍事的な支援は現在の規模では続かないため、ゼレンスキー大統領は難しい停戦交渉を迫られる。一方で、侵略はロシアにも大惨事をもたらしている。プーチン大統領はウクライナの非軍事化と欧米の分断を試みたが、実際には正反対のことが起きている。プーチン大統領が権力の座を占める限り、欧米が対露制裁を解除することもない。

過去50年の間、世界経済はグローバル化により発展してきたが、現在は自由貿易に反対する動きがみられ、世界に三つのデカップリングが生まれている。一つ目はロシアと西側の間のもので、新たな冷戦の様相を呈している。二つ目は西側と「グローバル・サウス」との間のもので、途上国が債務危機、資源・食料高、災害にさらされても、国内問題に注力する西側諸国の手助けは期待できない。三つ目は中国と米国の間のものであるが、全面的な欧露のデカップリングと異なり、限定的なものとなるだろう。これらがグローバル化を終わらせることはないが、世界経済にダメージを与え、地政学的な秩序を変化させる。

米国は依然として世界最大の国ではあるが、政治は機能不全で、社会の分断が深まっていく。また、米中の摩擦は激化していく。こうしたなか、リーダー国不在のGゼロの世界では、複数の秩序が生まれ、異なる主体が異なる分野でリーダーシップを発揮するようになる。

◇◇◇

同サミットには、岸田文雄内閣総理大臣がビデオメッセージを寄せたほか、林芳正外務大臣をはじめ国内外から産学官の有識者が出席し、「Gゼロ世界における日本の役割」などをテーマに熱のこもった議論を展開した。

【国際経済本部】

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