経団連のサブサハラ地域委員会企画部会(河村肇部会長)は5月25日、アフリカ人材育成に関する懇談会をオンラインで開催した。国際協力機構(JICA)の加藤隆一上級審議役、経済産業省の太田三音子貿易経済協力局技術・人材協力課長から、アフリカ人材育成の取り組み等について説明を聴くとともに意見交換した。両氏による説明の概要は次のとおり。
■ JICAによるアフリカ人材育成協力
「人間重視」「自立支援」「日本の経験の活用」の三つの基本方針のもと、多様なアフリカ人材育成施策を展開している。
その柱の一つである「ABEイニシアティブ」は、アフリカの若者を日本に招き、修士号取得と企業でのインターンシップの機会を提供するプログラムである。修了生には、アフリカの成長を牽引する水先案内人として、日本企業のアフリカビジネスをサポートすることが期待される。これまで約1500名を受け入れ、うち約180名が日本企業・団体に就職している。今後は、修了生と企業とのネットワークをより強化することが重要である。
また、「カイゼン・イニシアティブ」では、日本の品質・生産性向上の手法“カイゼン”をアフリカ企業に導入して支援している。ガーナの例では、参加企業の45%が不良品率を削減、37%が生産性向上を達成するなど、成果を上げている。
また、「エジプト日本科学技術大学」やケニアの「ジョモ・ケニヤッタ農工大学」などアフリカの大学の教育研究を支援し、高度人材の育成に貢献している。
このほか、アフリカの職業訓練校の能力強化に向けた支援、研修員の日本への受け入れ、民間連携を含む海外協力隊の派遣、人権リスクへの対処等、さまざまな枠組みを通じて人材育成を支援し、アフリカの発展を後押ししている。
■ 経産省によるアフリカ人材育成の取り組み
アフリカの社会課題の解決と日本の経済成長を同時に達成する、ウィンウィンの関係構築を目指し、各種の支援ツールを提供している。
「AOTS研修・専門家派遣事業」では、日系企業が外国人材育成のために、日本で行う受け入れ研修や現地への専門家派遣に加えて、現地の大学に開設した寄附講座等の実施を支援している。
人材育成事業のほかにも、「J-Partnership事業」を展開し、アフリカ等の新興国の社会課題の解決につながる日本企業の製品・サービス開発や実証等を支援している。また、日本企業が事業展開をしやすくなるよう、現地政府・業界関係者への研修や現地の産業人材育成制度の構築支援等を行う「制度・事業環境整備事業」等により、アフリカビジネスの促進に取り組んでいる。
現在、8月のTICAD8(第8回アフリカ開発会議)に向けて、アフリカ産業人材育成をさらに拡大するため「未来の産業人材イニシアチブ」(仮称)の準備を進めている。アフリカの若者が製造業やIT等の実践的なスキルを培うことができる教育・研修の機会を提供し、ビジネス現場で活躍する未来のリーダーを育成していく。
【国際協力本部】