経団連は5月31日、経済法規委員会企画部会(大内政太部会長)をオンラインで開催した。経済産業省経済産業政策局産業組織課の安藤元太課長から、「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針」(CGSガイドライン)の改訂に向けた検討状況について説明を聴くとともに意見交換した。CGSガイドラインは2017年に策定され、現在、大内部会長が参加するCGS研究会において、同ガイドラインの改訂に向けて検討を進めている。6月下旬の第6回研究会において取りまとめに向けた議論を行う。
説明の概要は次のとおり。
■ ガイドライン改訂のねらい
コーポレートガバナンスにかかる主な課題として、(1)どのような会社を目指すかを考え、経営や監督のあり方をそれにふさわしいものに変えるところにまで至っていない会社も多い点(2)コーポレートガバナンスに取り組むべき理由や意義に対する関係者の理解・納得が必ずしも得られていないという点(3)経営者がアントレプレナーシップ・アニマルスピリットを健全に発揮できる仕組みをつくれていない点――などがある。改訂案では、特に経営陣のリーダーシップの発揮のための環境整備を一つのテーマにしている。監督側と経営側は相互に影響を与え合うなかで変化していくものであることから、監督側と経営側の双方の機能強化が重要であることを強調している。また、コーポレートガバナンス改革の意義や目的について、あらためてメッセージとして問いかけることを一つのねらいとしている。
■ 取締役会の機能向上
改訂案では、「監督」の意義について、単に執行にブレーキをかけるのではなく、適切なリスクテークに対する後押し、あるいはリスクテークをしないことによるリスクの提起等も含まれると明記している。
社外取締役が相当数含まれる取締役会では、経営の基本方針や、それをどのように株主等のステークホルダーに説明していくかを議論するなど、目的意識を持つことが有益だろう。
■ ガバナンス体制と機関設計
改訂案では、どのようなガバナンス体制にするかは企業にとって競争戦略の軸の一つであり、企業が主体的に選択すべきとしつつ、モニタリング機能を重視したガバナンス体制を検討することも有益であるとしている。モニタリング機能を重視したガバナンス体制では、取締役会が経営者の暴走を止めることを前提に、権限委譲を通じて経営陣に広範な裁量を与えることで、経営の自由度を高めることができる点などで有益ではないかと考える。
■ 資本市場を意識した経営を助言・監督できる取締役の選任
海外の大企業と比較すると、日本ではファイナンス・インベストメントのスキルを持っている取締役の割合が小さい。どのような取締役を選任するかは各社次第だが、例えば資本市場との相互理解のために、資本市場を意識した経営を助言・監督できる者として、他社のCFO経験者、アセットマネージャー経験者などを取締役に選任することも考えられる。ただし、さらに進んで投資家株主の関係者から選任することについては、利益相反、情報管理、独立性・社外性などといった留意すべき点もあることから、総合的に判断する必要がある。
■ 経営陣の報酬等による執行側の機能強化
改訂案では、執行側の機能強化の方策として、トップマネジメントチームの組成や委員会の活用等について取り上げているが、そのなかで重要な取り組みの一つが報酬である。日本でも、株式報酬によって動機付けを変えることは、もっと積極的に取り組まれてよい。幹部候補のときから株式報酬を付与することで、企業価値向上のためのマインドセットがより働くだろう。改訂案では、社長・CEOについて、長期インセンティブ報酬の比率をグローバル水準である40~50%程度を目安とすることも考えられる旨を記載している。
【経済基盤本部】