経団連は5月18日、東京・大手町の経団連会館で、ユーラシア・グループのデービッド・ゴードン シニア・アドバイザーから、国際政治をめぐる動向等について説明を聴くとともに意見交換した。同会合は、同社が毎年開催し経団連が後援するGZEROサミット(今年は9月28日開催予定)を念頭に、さまざまなテーマに関する問題意識を共有するGZEROダイアログとしての位置付けである。ゴードン氏の説明の概要は次のとおり。
■ ロシア―ウクライナ紛争の影響
ウクライナ情勢は膠着している。ロシアとウクライナの双方が戦局を楽観的にとらえているため、紛争は長期化すると考えられる。
欧州では北大西洋条約機構(NATO)を強化する動きがみられる。スウェーデンとフィンランドはNATO加盟に向けて、手続きを加速させている。NATOへの恐怖がプーチン大統領を行動させたが、逆の方向に作用している。
今回の戦争を機に、西側諸国のロシアとの経済面での断絶は恒久的なものになるだろう。西側諸国は対露制裁を行っている。制裁の最もよい効果は、ロシアにウクライナと取引するインセンティブを与えることである。
■ 中国の動向
中露は対米・対NATOでは連携しているものの、今回の紛争では、両国間の緊張関係も明らかになった。中国は安全保障の観点からも主権を重視しており、これを軽視するロシアによる力の行使に不快さを感じている。
西側諸国による対露制裁を注視する中国には二つの考え方がある。一つ目は、ロシアのように、自国経済を危機にさらすような行動はしないとの考え方である。二つ目は、経済的な相互依存関係を強めれば、各国は中国への制裁をしづらくなるとの考え方だ。
ウクライナ紛争をきっかけに進むロシアとの断絶を踏まえ、中国とも関係を断つべきだとの圧力もあるが、各国の中国への依存度はロシアよりも高い。企業は、中国に依存しないサプライチェーンを構築しようとするなど、脆弱性の削減に取り組んでいる。
■ 米中関係と米国のインド太平洋政策
米国の当初の予想に反して、中国はロシアから距離を取っている。このことは米中間の緊張を和らげている。中国は今秋に控える共産党大会と新型コロナウイルスへの対応から自制的な行動をとっている。結果として、米中関係は良好ではないが安定している、いわばネガティブな均衡が保たれている。
米国のインド太平洋地域における経済分野のコミットメントは依然小さいものにとどまっているが、安全保障分野のコミットメントが強化されていることは重要だ。
【国際経済本部】