経団連の通商政策委員会企画部会(神戸司郎部会長)とアメリカ委員会連携強化部会(吉川英一部会長)は4月27日、テア・ロズマン・ケンドラー米国商務省輸出管理担当次官補の来日の機会をとらえ、東京・大手町の経団連会館で懇談会を開催した。ケンドラー氏の説明の概要は次のとおり。
今般のウクライナ侵略を受け、米国は、ロシアの軍事力を低下させることを目的に、輸出規制を強化している。効果的な規制とするため、米国では主に次の3点を重視している。
第1に、米国は、従来から、軍事力向上に資する品目と技術を対象に、EAR(輸出管理規則)に基づく輸出規制を実施してきた。今般、ロシア、ベラルーシ向けの輸出規制を大幅に厳格化し、防衛、航空宇宙、海洋関連の技術を含むすべてのEAR規制品目について、輸出を原則不許可とした。
第2に、個人や企業に対する規制として、ロシアの軍事力向上を支える個人・企業を、新たにエンティティリスト(注)に追加して規制対象とした。エンティティリストに掲載された事業者向けの輸出は、EAR対象品目すべてについて、原則不許可となる。
第3に、米露の直接の貿易量は多くないので、米国内で生産された製品の規制だけでは不十分である。そこで、米国原産の技術、ソフトウエアを直接使用して米国外で生産された製品も幅広くカバーするため、直接製品ルール(Foreign-Direct Product〈FDP〉Rules)を拡大した。例えば、米国以外の「第三国」で製造された製品でも、米国製の技術を使って開発されたものであれば、直接製品ルールの対象となり、ロシア、ベラルーシへの輸出に際して米国の許可が必要となる。しかし、ここでいう「第三国」が、Global Export Controls Coalitionの参加国であれば、米国の輸出許可は不要である。このコアリションは、米国と類似の規制を有する約38カ国を指す。日本をはじめとするG7各国はこれに含まれ、米国と連携して輸出規制に対応している。
その他、アルコール飲料や宝飾品等の奢侈品のロシア、ベラルーシ向けの輸出も規制している。
こうした輸出規制の実施にあたっては、企業の平等な競争条件を維持することも重要であり、十分に留意したい。引き続き日本経済界の協力も得ながら効果的な規制の実施に努めたい。
(注)米商務省が輸出管理法に基づき、国家安全保障や外交政策上の懸念があるとして指定した特定の外国人、事業体または政府を列挙したリスト。掲載された対象に、特定の物品や技術を輸出、移転することは原則禁止されている
【国際経済本部】