経団連は4月6日、経済財政委員会経済情勢懇談会を開催した。SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストから、「日本経済の展望~ウクライナ危機と世界金融引き締め」について説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ 最近の金融市場の動向
株式市場は、年明け以降、ウクライナ危機や金融引き締めの影響を受け、例えば米国のS&P500指数は、昨年末から13%下落した。足元ではマイナス5%まで回復したが、ウクライナ情勢次第では、さらなる下落のリスクもある。今後、4-6月期に底打ち、7-9月期に回復すると予想する。
為替市場は、金融政策の先行きにより、通貨ごとに動きが異なる。ドルは、FRBの今後の利上げを見込んで上昇傾向にある。一方、ユーロは、ECB(欧州中央銀行)の利上げペースが米国より遅れる想定から横ばい傾向にある。円は、金融引き締めの動きが見通せず、低下傾向にある。
国債利回りは、日本も含め全般的に上昇傾向にある。米国では、インフレ高進へのFRBの対応を受けて、特に短期金利が急激に上昇した。こうしたなか、2年債利回りが10年債利回りを上回る逆イールドが発生し、将来の景気後退懸念も一部にみられる。
■ コロナ禍後の経済・政治動向を見通すポイント
経済動向について、1次産品価格の上昇が短期的には景気を下押しするとみている。中長期的な動向は、安全保障を含む情勢次第であり、見通し難い。コロナ禍は、経口薬の普及等により、景気下押しの主因ではなくなると予想している。
政治動向について、ウクライナ危機等による米露対立に加え、米中対立も引き続き懸念材料である。ロシアとウクライナが停戦した後、米国が「世界の警察官」を担う気があるか、中国がロシア寄りまたは中立のスタンスを取るかを今後の注目点として考えている。
■ 金融政策の見通し
米国では、金融緩和が終了し、利上げの流れにある。ただし、日本や欧州など1次産品輸入国では、ウクライナ危機がエネルギー等の供給確保の懸念を高め、景気を下押ししており、金融引き締めの動きは後ずれするだろう。
米国では、今年中に2.75~3.0%程度へ利上げすると見込む。5月のFOMC(連邦公開市場委員会)を皮切りに0.5%ポイントの利上げを4回続けた後、11月、12月も0.25%ポイント利上げし、景気に中立的な金利水準を超えると予想する。ユーロ圏では、金融緩和が終了し、年内にも利上げの可能性がある。日本では、欧米と異なり、利上げに向けた経済・物価動向の条件は整っておらず、金融緩和を継続するだろう。
■ 内外経済の見通し
2022年の世界経済の成長率は、前年比プラス3.5%と予測する。今後のウクライナ情勢次第では、下方修正もあり得る。
日本経済は、前年比プラス2.0%と予測する。ウクライナ危機の影響による下押しがある一方、21年に他国よりもウィズコロナの動きが遅れた影響で、22年の成長ペースが加速する。自動車セクターの供給制約は改善方向にあり、旅行等サービス消費のペントアップ需要(抑え込まれていた需要)が期待できる。リスク要因として、ウクライナ危機の深刻化や中国国内での感染拡大を注視する必要がある。
【経済政策本部】