経団連(十倉雅和会長)は4月4日、「Society 5.0の扉を開く~デジタル臨時行政調査会に対する提言」を公表した。
同日、記者会見を行った十倉会長は、「今こそ、日本がSociety 5.0へと転換する、最大にして最後のチャンス」と強調。経済界としてもデジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)の取り組みを全面的に後押しすべく、同提言を取りまとめた旨説明し、そのポイントを紹介した。
同提言の概要は次のとおり。
1.経団連とデジタル臨調の協働
デジタル臨調の使命は、集中改革期間において、日本の経済社会全体の仕組みを根本的に変革し、デジタルベースへの転換を完遂することである。
そこで、経団連は、デジタル臨調による規制の横断的な見直しを後押しすべく、全会員を対象に実施したアンケートを基に、デジタルトランスフォーメーション(DX)の障壁となっている課題等を洗い出し、提言を取りまとめた。同提言を、政府の「規制一括見直しプラン」に盛り込むとともに、その実現に向けて全力を傾注することを求める。
2.Society 5.0の実現に向けた3つのステップ
デジタル原則を社会の隅々まで徹底し、Society 5.0の土台を築く観点から、集中改革期間(2022~25年)に必要な3つのステップを以下に示す。
STEP1=既存規制の総点検とデジタル一括改正(始動)
まずは、時代にそぐわない規制を変革し、利用者目線でBPR(業務改革)を断行したうえで、国・地方の行政手続きや民間取引等において途中で紙が1枚も入らない、真の「デジタル完結」を実現することが待ったなしの最優先課題である。デジタルを導入できない「例外」には、すべからく説明責任が必要である。ネガティブリスト方式を導入し、所管省庁が挙証責任を負って説明する仕組みを構築することが不可欠である。
Society 5.0の実現のためには、国から地方に対して技術的助言にとどまらない強力な措置を講じ、あらゆる地方公共団体において改革を推し進める必要がある。民間慣行がDXを阻害している場合は、経団連としても業界団体等と緊密に連携し、DX推進を強力に呼びかけていく。
STEP2=新たな制度・インフラの整備(過渡期)
日々目まぐるしく進歩する技術に、法・規制が追い付くことはあり得ない。先端技術に関する安全基準等の制度を早期に整備するとともに、ゴールベース規制(注)への転換に着手すべきである。
行政はもとより、医療・教育・インフラ・環境等の分野について、データの集積・公開に向けた環境整備が急務である。マイナンバーは個人を起点とするデータ連携のカギである。特定個人情報を撤廃し、ヘルスケアや教育、税、社会保障等、さまざまなデータの連携と有効活用に向けた制度を整える必要がある。
STEP3=デジタル前提の体制構築(Society 5.0の土台の概成)
技術が日々進歩し続けるなかで、STEP1、2で実現した規制・制度改革が決して前時代的なものとならないよう、行政が自律的に社会の進展に対応できる仕掛けをビルトインすることが必要である。今後制定・改正するあらゆる法規制がデジタル原則に適合しているか、事前にチェックする仕組みの構築が不可欠である。
3.さらにその先へ
世界のDXから20年以上の後れを取った日本にとって、デジタル臨調のもとでの3年間の改革は、Society 5.0の扉を開く一里塚にすぎない。これから先、仮想空間やAI予測の精緻化、ゲノム解析等、世界では新技術が絶え間なく台頭する。集中改革期間の後も、われわれは決して歩みを止めてはならない。
(注)ゴールベース規制=規制の対象を事前に細かく規定するのではなく、最終的に達成したいゴールを規定する方法。技術の活用・政策決定を柔軟に行えるという利点がある
【産業技術本部】