経団連は1月18日、提言「Society 5.0時代のヘルスケアⅢ~オンラインの活用で広がるヘルスケアの選択肢」を公表した。同提言の内容について、具体的な取り組みも交えながら紹介する。第5回は、「介護」を取り上げる。
■ 社会的意義
将来の要介護認定者数の増加に対応するため、介護職員を大幅に増員する必要がある。厚生労働省の試算によると、2040年度までに、19年度時点と比べて約69万人の介護職員を追加で確保しなければならない。生産年齢人口が減少するなかで非常に厳しい状況にある。この問題の解決策として、テクノロジーを活用した介護業務の効率化、さまざまな医療・介護データを活用した重症化予防や自立支援介護が注目されている。これらは、介助者の身体的・心理的負荷の軽減にもつながる。また、介護の専門性が高まり、仕事のやりがい・魅力が向上することも期待されている。
■ 企業の取り組み~SOMPOケアの事例
SOMPOケアは、ICT・デジタル技術を積極的に活用し、より少ない負担で質の高い介護サービスを提供できる、持続可能な介護モデルの構築を目指している。19年には、東京都品川区に最新テクノロジーの実証などを行う研究所「Future Care Lab in Japan」を設立。介護現場のニーズと開発企業のシーズのマッチングを行い、開発実証、現場実証を進め、実際に介護現場などで活躍する製品を生み出している。設立から2年間で365件のリサーチを行い、「介護用入浴シャワー」や「介護スケジュール管理システム」「見守りセンサー」「食事量自動記録システム」など、現場実証に至ったものも34件に上る。同社の岩本隆博取締役執行役員CDIOは、「必要とされる介護職員数の確保が難しい状況において、安心・安全・高品質な介護を実現するためには、テクノロジーやデータを駆使し、人ができることの範囲を拡大していくことが重要である」と述べている。
■ 課題と提言
わが国の介護現場においてテクノロジー活用やデジタル化を推進するためには、介護事業所で使用する各種業務システム、見守りセンサーや介護ロボットなどデジタルデバイスの安全基準や性能基準、出力仕様の標準化を進めるべきである。標準化によって、サービス連携・データの一元化において、特定の機器やサービスに律速しないかたちで、介護業務支援システムの構築が可能となる。
また、テクノロジーを活用しながら人が関わる業務の質の向上に取り組んでいる介護事業者に対して、積極的に評価する新たな介護品質評価基準の策定を求める。
さらに、介護施設人員配置基準(入所者数3に対して介護・看護職員数1以上)についても、利用者にとっての品質確保、職員の負担軽減が図られ、テクノロジー・データ活用による業務時間の削減効果が認められる場合、その改善効果の範囲で見直すべきである。
【産業技術本部】
- Society 5.0時代のヘルスケアⅢ(全7回)
- 〈1〉各論~健康管理・増進
- 〈2〉各論~診療
- 〈3〉各論~調剤・服薬指導
- 〈4〉各論~手術
- 〈5〉各論~介護
- 〈6〉各論~治験
- 〈7〉各論~基盤
- 〈2〉各論~診療