経団連は1月18日、提言「Society 5.0時代のヘルスケアⅢ~オンラインの活用で広がるヘルスケアの選択肢」を公表した。同提言の内容について、企業の取り組みも交えながら紹介する。第2回は、「診療」を取り上げる。
■ 社会的意義
オンライン診療は、新型コロナウイルス対策のみならず、診療待ち時間の短縮や通院負担の軽減、医療従事者の負担軽減を可能とし、国民の医療へのアクセスを向上させる仕組みである。例えば、医療機関への交通アクセスが良くない地域に暮らしていても、年齢・疾病によって移動に困難を伴う場合であっても、また、子育てや介護あるいは仕事の事情で時間を確保しにくい場合であっても、簡便に適切な診療を受けることができる。生活スタイルや疾病の状況に応じて、対面診療とオンライン診療を組み合わせ、医療アプリ等の最新の技術も活用することで、患者一人ひとりのニーズに寄り添った、より質の高い医療が実現する。
■ 企業の取り組み~MICINの事例
MICINは、患者と医師・薬剤師等の医療従事者をオンラインでつなぐオンライン診療サービス「curon(クロン」を提供している。これを使えば、患者は手持ちのスマートフォン等で、予約から問診、診察、決済、医薬品の配送手続き(院内処方の場合)に至るまでをオンラインで完結させることができる。
オンライン医療に関する制度改革や新型コロナの感染拡大もあり、導入医療機関数は5000件(2021年2月時点)を超えた。同社の原聖吾CEOは、「オンライン診療を希望する医療機関・患者が活用できるよう支援する。オンライン診療への共通の理解の基盤となるユースケースやエビデンス作成ならびに必要なサポートや機能の拡充にも対応していく」と意気込む。
■ 課題と提言
新型コロナの感染拡大を契機とした特例措置により、疾患の種類を問わず初診を含めたオンライン診療が時限的に解禁された。その後、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」の改訂によりオンライン診療による初診が恒常的に解禁され、中央社会保険医療協議会(中医協)においても診療報酬上の実施要件や施設要件が撤廃・緩和され、診療報酬の引き上げが答申された。今後、オンライン診療を提供する医療機関が増加し、サービスが広く普及することを期待する。
デジタル療法を行う医療アプリについては、デジタル技術の進歩のスピードに制度が追い付いておらず、機会損失が発生している。医療アプリの早期承認制度を新設すべきである。
【産業技術本部】
- Society 5.0時代のヘルスケアⅢ(全7回)
- 〈1〉各論~健康管理・増進
- 〈2〉各論~診療
- 〈3〉各論~調剤・服薬指導
- 〈4〉各論~手術
- 〈5〉各論~介護
- 〈6〉各論~治験
- 〈7〉各論~基盤
- 〈2〉各論~診療