21世紀政策研究所(十倉雅和会長)は2月8日、会員企業幹部260名の出席を得てオンラインセミナー「2022年の国際関係を展望する」を開催した。同研究所の佐橋亮客員研究委員(東京大学東洋文化研究所准教授)が登壇。昨年から現在までの国際情勢を振り返るとともに、22年に日本企業が留意すべき国際関係の着眼点を解説した。概要は次のとおり。
■ 現在までの国際情勢
現在の世界は「協調力の弱い世界」といえる。
まず、米中対立が固定化してきている。伝統的な安全保障分野(軍事分野)のみならず、経済分野、科学技術分野においても両国が対立している。
次に、ロシアと欧米の関係がウクライナをめぐり緊張関係にある。ロシアの欧米に対する不信は、NATOの東方拡大に起因するものと考えられる。しかし、プーチン大統領が単なる脅しとしてロシア軍をウクライナ国境周辺に動員しているのか、それとも、単なる脅しではなく、北京五輪終了後に一気に侵攻するつもりであって、欧米との外交はロシア軍のさらなる動員を進めるための時間稼ぎにすぎないのかは定かでない。現時点で明らかな事由は、ロシアの欧米への不信が強くプーチン大統領の判断を合理的に読むことが難しいこと、そのため懐柔をもくろむ米欧の外交努力も奏功するとは言いづらいことである(※セミナー開催時点の情報に基づく見解)。
さらに、先進国と途上国の立場の相違が、人権やグリーンをめぐって顕在化している。先進国の人権やグリーンをめぐる言説が普遍的であるとはいいがたい状況である。
このような協調力の弱い世界がこのまま維持されれば、グローバル化の進展に大きな影響を与え、ビジネス活動や生活に大きな影響を及ぼすことが予測される。
■ 22年の展望
まず、コロナ禍による経済社会関係のダメージがインド太平洋全般で依然として強いため、22年は「コロナ禍のダメージを回復できる糸口をつかめるか」が問われる年といえる。
次に、今年は選挙の年でもある。韓国大統領選挙、フランス大統領選挙、中国共産党大会、米国中間選挙と22年は「政治の季節」がやってくる。
さらに、経済安全保障推進法、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定を控えていることを踏まえると、日本では本格的に「安全保障を議論する年」ともいえる。
その他、喫緊の問題としてウクライナをめぐる情勢も重要となるだろう。
また、より長期的な視点で検討すると、米中対立が重要となるだろう。米中間での対話の模索が今後も続くと予想されるが、それは両国が競争姿勢を改めるという意味ではない。米国は、安全保障、人権、台湾を理由にさらに果敢なポーズをとり、中国は報復的なエコノミック・ステイトクラフト(経済的手段を通じた国益の追求)を稼働させるだろう。
■ 企業活動への留意点
米中対立は、科学技術分野も含めた経済面に及ぶため、米国および中国の政策の応酬が企業における経営課題となる。産業界は、米中対立の影響でグローバル化が制約される現状を踏まえ、「窮屈になる」グローバル経済社会を前提として認識する必要がある。そのうえで、情報収集やサプライチェーン見直しなど多面にわたる対応が求められるだろう。
【21世紀政策研究所】