経団連は11月26日、教育・大学改革推進委員会企画部会(平松浩樹部会長)を開催した。三重大学特命副学長・地域イノベーション学研究科教授で宇都宮大学特命副学長・学術院教授の西村訓弘氏から、地方創生における地方大学の役割について、また、九州大学副学長・共創学部長の鏑木政彦教授から、同大学共創学部における文理融合教育の取り組みについて、それぞれ説明を聴き懇談した。説明の概要は次のとおり。
■ 地方創生における地方大学の役割(西村氏)
富が東京に集中し、東京と地方の格差は著しいが、過疎地域でも時代の変化に適応すれば、新たな富を生み出せると考える。三重大学では2009年、「地域イノベーション」を「地域内で創造的破壊を行い、固定概念にとらわれずに既存のものと新規のものによる新結合を生み出すことで、新たな価値を創造し、時代に適応した新たな社会の創造につなげること」と定義し、地域イノベーション学研究科を新設した。政府が取り組む「地方創生」は、地方が先行して若返ることで新たな日本の姿を創造することを目指しており、「地域イノベーション」と同様の概念である。
同研究科では、新事業を開拓する人材の育成や新事業の創造につながる共同研究のほか、地域企業の社長100人を博士にすることを目標に掲げ、三重県庁と連携しながら、地域企業の経営者へのリカレント教育に力を入れて取り組んでいる。同研究科で学んだ経営者は、学修成果を基に事業展開を進めており、三重県の産業振興施策の後押しもあって、企業業績は好調に推移している。
地方大学には、地域産業の成長力を引き出す役割が求められているものの、1つの大学だけでは限界がある。境遇の似た複数の地方大学が連携・相互補完することで、地方大学による地域発の日本の再生への貢献が可能となる。
■ 九州大学共創学部における文理融合教育(鏑木氏)
九州大学が18年に新設した共創学部は、人文科学・社会科学・自然科学を横断する課題解決型アプローチと英語によるコミュニケーション力の向上に重点を置いた教育を実践することで、人類・現代社会が共通して抱える地球規模かつ答えのない課題の解決に取り組む態度・能力を涵養している。学生はまず自分がどんな課題に取り組みたいのかを考えたうえで、次にその課題を解決するために必要となる専門分野を能動的に学ぶ。4年次に、これまでの学修で得た知識を組み合わせて課題解決策の創造に取り組めるカリキュラムを構築している。この課題ベースの方法論を通じた学修によって、様々な分野の知識が有機的かつ最適に関連付けられ、複数の専門分野にまたがる社会的課題を解決できるようになる。
00年代以降、人文・社会科学と自然科学・技術を組み合わせて課題解決できるSTEAM人材の育成が世界各国で課題となっており、リベラルアーツ教育の実践が求められている。米国ではカレッジがそうした教育を担っているが、日本でも、それぞれの大学が多様な文理融合教育を実践していくことが重要である。
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懇談終了後、委員間で、大学改革に関する提言骨子案について議論するとともに、「『学校教育情報化推進計画』策定に向けた意見」を審議し、了承した。
【SDGs本部】