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Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年11月18日 No.3522 企業の情報開示等をめぐる昨今の議論の状況 -金融庁との懇談/金融・資本市場委員会

古澤氏

経団連は10月28日、金融・資本市場委員会(太田純委員長、日比野隆司委員長、林田英治委員長)を開催し、金融庁の古澤知之企画市場局長、廣川斉企業開示課長、園田周国際会計調整室長から、企業の情報開示等をめぐる昨今の議論について説明を聴き、意見交換した。説明の概要は次のとおり。

■ サステナビリティ基準開発をめぐる問題意識

会計基準の分野では、国際会計基準(IFRS)を日本でどのように受け入れるかについて、すでに長い議論の積み重ねがある。例えば、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」については、わが国からIASB(国際会計基準審議会)に対して意見を発信し、完成したIFRS第15号の基準を基に、わが国の企業会計基準委員会が「収益認識に関する会計基準」を公表した。ようやく実務も円滑に進むようになり、これまでの関係者による尽力にあらためて敬意を表したい。国際的な対応に関しては、バーゼル規制の分野でも、バーゼル銀行監督委員会において、日本の関係者の声を踏まえて意見を発信してきた。

サステナビリティ基準の分野で、こうした国際的な意見発信や日本での開示項目検討の取り組みをどのように行っていくかが目下の課題だ。民間主導の取り組みを進めるために、産業界には物心両面でのサポートをお願いしたい。

■ 国際的なサステナビリティ基準の開発と国内の体制整備

IFRS財団は、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)において、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の設立を表明する予定である(※)。2022年夏には気候変動に関する基準を最終化すべく急ピッチで開発を進める。ISSBの基準は、IOSCO(証券監督者国際機構)で承認されると、各国におけるそれぞれのプロセスを経て、開示内容が決定されることになる。

金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)では、国際的な動きを受けて、国内での対応を検討している。サステナビリティ情報については、有価証券報告書において、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)で柱となっている「ガバナンス」と「リスク管理」の開示を求め、「戦略」と「指標と目標」については、企業の重要性を踏まえて開示すべきとの意見があった。

国内体制については、民間主体のサステナビリティ開示基準に対処する組織が、(1)ISSBへの意見発信(2)ISSB基準を踏まえたわが国におけるサステナビリティ開示の個別項目の検討――を行い、それを有価証券報告書に取り込むことが考えられるとの意見があった。この関連で、財務会計基準機構(FASF)において、サステナビリティ基準の開発、国際的な意見発信を担う旨、定款を改訂している。

■ その他の課題

岸田文雄首相の所信表明演説では、「非財務情報開示の充実」に加え、「四半期開示の見直し」について言及されている。四半期開示については、DWGで丁寧に議論していく。

コーポレートガバナンス・コードに関して、経団連から、コードの改訂により社外役員が増えた効果を検証すべきとの課題が提起された。今後、さまざまな企業にインタビューするので協力をお願いしたい。

「会計監査の在り方に関する懇談会」では、中小監査法人の品質の維持や、監査法人に対するレビューのあり方について検討している。今後、年内にかけて、制度改正も視野に入れて議論していく。

◇◇◇

意見交換の後、経団連の提言「国際的な意見発信や国内基準の開発を担うサステナビリティ基準委員会(仮称)の設立を求める(案)」について審議した。

※11月3日にISSBの設立が表明された

【経済基盤本部】

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