経団連は9月22日、企業行動・SDGs委員会企業行動憲章タスクフォース(関正雄座長)をオンラインで開催した。米国を拠点とする企業が会員のBusiness for Social Responsibility(BSR)東京事務所の永井朝子マネジング・ディレクターと同サンフランシスコ事務所のハンナ・ダーントンアソシエイト・ディレクターから、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が求める企業の取り組み、テクノロジーによってもたらされる人権リスクについて、説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。
■ 指導原則の成り立ち
国連は、1948年に人権および自由を尊重し確保するために、すべての人・国家が守るべき基準として「世界人権宣言」を採択した。その後、企業も人権保護に関して役割を果たすべきであるという潮流が高まり、2011年に「指導原則」が採択された。この指導原則において、国家の人権保護義務に加えて、人権を尊重する企業の責任を明確にした。
指導原則の16~23には、企業に求める取り組みを示している。欧州を中心に、人権デュー・ディリジェンス(DD)の実施を義務付ける法制化が進められ、対応を準備する必要があるなか、これらの原則を理解することが重要である(図表参照)。
指導原則では、人権への影響を3つのカテゴリー((1)影響を引き起こす(2)影響に結び付いている(3)影響を助長する)に分けている。企業が直接的に関与せず、間接的に人権を侵害した場合でも、救済へのアクセスの提供に協力することを求めている。
■ 技術の進化と人権リスク
技術の進化は、個人の権利や自由に対してさまざまな影響を及ぼすが、その活用方法により、好影響も悪影響ももたらし得る。
技術のライフサイクルは、3つのフェーズ((1)設計・開発(2)プロモーション・ライセンス・販売(3)使用段階)に分けられる。すべてのフェーズで影響を防止し、抑制するための努力が必要である。
(1)のフェーズでは、開発者は、想定外の方法で技術が活用される可能性を考慮すべきである。
(2)のフェーズでは、人権への悪影響を防止するため、技術を活用する企業と開発者との対話が不可欠であり、双方が人権への影響を理解しておく必要がある。
(3)のフェーズは、人権に顕著な影響を及ぼす。想定外の方法で使用された場合、開発者は防止策や緩和方法を検討し、技術を活用する企業は開発者に再設計についてフィードバックすべきである。とりわけ、顔認証など個人情報にかかわる技術では、使用者が、個人の情報を共有することで生じるリスクについて正しく理解することが重要である。そのため企業は、技術を活用する理由を明示するのはもちろん、技術の活用がもたらす影響について透明性を担保するとともに、どのようなデータを収集しているか等について説明し、その収集にあたって合意を得る必要がある。
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意見交換では、技術を開発した企業から、利用者に自社技術を正しく使用してもらうために、企業はどのようにコミットすべきかという質問があり、これに対し、ダーントン氏は、「技術が誤った方法で使用されないためには、人権DDを1回限りではなく、継続的に実施することが重要である。特に影響を受けることが予想されるステークホルダーがいる場合は、当事者の代表と対話をすることも肝要だ」とコメントした。
【SDGs本部】