経団連の地域経済活性化委員会企画部会(徳川斉正部会長)は、地方創生の実現に向けた経済界のアクションについて、有識者からの意見聴取ならびに意見交換を通じて、検討を進めている。地方の経済社会の活性化には、東京圏などからの人の流れを創出することが不可欠との認識のもと、9月2日の同部会では、多拠点居住サービス「ADDress」を展開するアドレスの佐別當隆志社長から、多拠点居住の現状や推進に向けた課題、経済界への期待について聴いた。
佐別當氏は、地域の持続可能性を維持するには、地域資源を有効活用する視点が重要と考え、各地で空き家問題が深刻化する状況を逆手にとったビジネスを考案した。空き家をシェアハウスとして整備し、2019年4月から、全国どこでも住み放題の多拠点居住サービスを会員制(月額4万4000円)で展開している。コロナ禍で地方居住への関心が高まるなか、20~40代を中心に幅広い年代層で利用者が増加しており、会員数は新型コロナウイルス前と比べておよそ7倍に達している。
佐別當氏は、こうしたサービスは「先進国のなかでこれだけ空き家がある日本でしか始められないビジネス」と指摘。海外のメディアなどからも注目されており、地方の課題を解決しようとすることがビジネスになると強調した。
また、「事業を通じて、テレワークの継続を希望する働き手が増加していることを実感している」と述べ、企業は働く場所の自由度を高め、人事評価のあり方などをあわせて見直すことで、社内人材の多様化と企業の成長を図ることができると指摘した。そのうえで、新しい働き方やライフスタイルの推進が、わが国の成長の一つのカギであり、「政府が二地域居住を促進すると宣言し、経団連など経済界と機運醸成を図ってもらいたい」と期待を述べた。
【産業政策本部】