1. トップ
  2. Action(活動)
  3. 週刊 経団連タイムス
  4. 2021年9月30日 No.3515
  5. 数理活用産学連携イニシアティブ(第2回)を開催

Action(活動) 週刊 経団連タイムス 2021年9月30日 No.3515 数理活用産学連携イニシアティブ(第2回)を開催

経団連と数学界は9月10日、第2回数理活用産学連携イニシアティブをオンラインで開催した。同イニシアティブは、産業界の数理活用という新しいかたちの産学連携を模索する枠組みである。京都大学高等研究院の平岡裕章教授から、「トポロジカルデータ解析を用いたデータ活用社会の実現」をテーマに説明を聴くとともに意見交換した。概要は次のとおり。

■ トポロジーとデータ科学

近年、インターネットや計算機、計測技術の発達により、膨大なデータが蓄積されている。膨大なデータのなかから潜在的な価値を抽出するには、数学的言語を開発し、その意味のもとでデータを理解する手法が有用である。

トポロジカルデータ解析は、今世紀に数学者が開発した強力な手法である。トポロジーは幾何学の一分野であり、大域的なつながり方を表す「穴」を不変量に持つ。膨大なデータの大域的なつながり方をとらえることで、新たなデータ解析的な発見が得られる。トポロジカルデータ解析には、パーシステントホモロジーとMapperという、大きく二つの手法がある。材料科学、生命科学、情報通信、ビッグデータ解析など、さまざまな分野で応用されている。

■ パーシステントホモロジー~材料科学への応用

パーシステントホモロジーとは、さまざまな入力データに対して、データに内在する「穴」のマルチスケール情報を定量的に抽出することができる数学的記述法である。出力されるパーシステント図は、単なる統計的な特徴量を超えて、データの構造まで記述している。このパーシステント図を用いることで、さまざまな材料構造の解析が可能となる。企業との共同研究においては、数学の予備知識を必要としない汎用ソフトウエア「HomCloud」が使われる。

■ Mapper~企業特許戦略への応用

Mapperは、複雑なデータの「形」を抽出する一手法である。パーシステントホモロジーの手法と比べて、高次元データの取り扱いを得意とする。また、マトリックスデータで与えられる入力であれば、どのような分野にも適応できる。例えば、各企業を技術空間上で位置付け、Mapperグラフとして可視化することで、企業の特許戦略を分析することも可能となる。

■ データ理解のために必要な数学的記述

近年のデータ科学では、複雑かつ膨大なデータを数学的に記述することが求められている。これは深層学習に代表される機械学習の問題点である「ブラックボックス問題」の解決、つまりAI活用のレベルを飛躍的に向上させ、データの背後に潜む原理を理解し得る手法の開発が可能となる。その応用分野は材料科学や企業特許戦略にとどまらず、環境エネルギー、医療・生命、AIなど非常に幅広い。

【産業技術本部】

「2021年9月30日 No.3515」一覧はこちら