本連載では、米国をより深く知るため、広大な米国を構成する50州+1特別区の情報を順次ご紹介します。
16.フロリダ州
16世紀のスペイン人の入植に端を発し、イギリス、スペインの手を経てアメリカの統治下に入った地域である。1845年に27番目の州としてアメリカ合衆国に加盟した。
経済面では、カリフォルニア州、テキサス州、ニューヨーク州に次ぐ全米4位の域内総生産(1.1兆ドル)を誇る。「サンシャイン・ステート」と公称する同州は亜熱帯性気候のリゾートとして広く知られ、観光業が栄えている。加えて、温暖な気候を活かした農業、中南米はじめ各国・地域との貿易業、ケネディ宇宙センターに代表される航空宇宙産業なども経済を支える。
州人口は2100万人と、ニューヨーク州を上回り全米3位である。1960年ごろから年間30万人程度の純増が続いている。直近10年間で白人有権者が100万人以上減少する一方、ヒスパニック系有権者が200万人近く増えている点が特徴的である。ヒスパニック系は民主党支持と思われがちだが、南フロリダのキューバ系亡命移民は、共和党支持が根強い。支持政党でみると共和党有権者登録数が約480万人、民主党が同510万人と拮抗しているため、大統領選では重要な州となっている。
17.ジョージア州
1732年、英国が北米に築いた最後の植民地に由来する州。時の英国王ジョージ2世から勅許を得て設立され、同王の名を取って「ジョージア」と命名された。独立13州(1776年に独立宣言を公表してアメリカ合衆国を構成した13州)の一つである。
南北戦争にはアメリカ連合国(南部)の初期構成州として参戦。西部戦線終盤の戦場となり大きな損害を被った。ちなみに、現在のジョージア州旗は初期の連合国旗と似た意匠を採用している。
経済面では、ピーナツやモモをはじめとする農業が盛んである。また、サバンナ港とアトランタ空港を擁し、物流拠点でもある。ホーム・デポ(小売)、コカ・コーラ(飲料)、UPS(流通)、デルタ航空(航空)といった名だたる米国企業が本社を置く。
政治面では共和党が優勢とみられてきたが、郊外票のトランプ離れから2020年大統領選では0.2%の僅差でバイデンが勝利した。民主党の大統領候補が同州を制したのは1992年以来のことであった。全米が注目した2021年1月の二つの上院決選投票でも、トランプ支持者の投票率が伸びずに民主党候補が勝利して、上院は50対50と割れた。
18.ケンタッキー州
1792年、バージニア州からアパラチア山脈以西の地域が分離して成立した州。ケンタッキーダービー(競馬)やバーボンウイスキーが有名である。ルイビル市南のフォートノックス米国金塊保管庫は、連邦政府が保有する金準備高の半分を保管しており、厳重な警備体制の代名詞とされている。
経済の中心は製造業で、特に自動車関連工業が盛んである。州内での日系企業の活動も活発であり、進出企業数(約200社)、雇用者数(約4.7万人)とも他の外国勢に大差をつけてトップに立っている。
政治的には、南部諸州と同じく共和党が強い州である。現在、連邦上院で共和党トップを務めるミッチ・マコーネル少数党院内総務を送り出している。
【米国事務所】