経団連は8月2日、スタートアップ委員会スタートアップ政策タスクフォース(出雲充座長)をオンラインで開催した。オープンイノベーションの促進等に向けた税制上の措置と検討課題について、経済産業省の中村智経済産業政策局企業行動課課長補佐と経団連の小畑良晴経済基盤本部長から説明を聴いた。概要は次のとおり。
■ スタートアップ関連税制の概要(経産省)
わが国の経済構造は、デジタル化の進展、カーボンニュートラルの推進はじめ大きな変化に直面している。そうしたなかで、国内企業は国際的にみても付加価値を創出できていない。その背景として、企業の設備投資や研究開発費比率が対営業利益ベースで低下し、新製品や新サービスを投入した企業の割合も低下していることが挙げられる。ベンチャー企業の時価総額やIPO(新規公開株)数、ベンチャーキャピタルの投資額は増加傾向にあるものの、米欧中等と比較すると桁違いに差をつけられている。
政府では、スタートアップ振興に向けて、意識・起業・事業化・成長のフェーズごとに施策を整備・検討してきた。このうち税制上の主な措置に「オープンイノベーション促進税制」がある。同制度では、国内の事業会社等がオープンイノベーションを目的にスタートアップの株式を取得する場合、取得価額の25%を課税所得から控除することができる。2年間の時限的措置で、今年度末に期限が到来するため、延長の要否を検討するとともに、出資元企業、出資先企業、出資額等の適用の要件についても見直す余地がある。
このほか、事業化フェーズを支援する「エンジェル税制」では、総所得や株式譲渡益からベンチャー企業への株式投資額を控除することが可能となっており、活用事例は堅調に増えている。また、成長フェーズでは、「ストックオプション税制」を活用することで、スタートアップが国内外の高度・専門人材を円滑に獲得できるよう支援している。その他必要な措置についても引き続き検討していく。経団連会員企業には、ぜひ制度の活用と具体的なニーズにかかる声を寄せてほしい。
■ 今年度の検討課題(経団連)
経団連では、9月に来年度税制改正に向けた提言を公表すべく議論を重ねている。そのなかで、オープンイノベーション促進税制は重要な措置であり、相応の期間の延長を行ったうえで、資金の出し手や出資額等の要件見直しを通じて、使い勝手を改善することが重要である。また、研究開発税制、スピンオフ税制、退職所得課税はじめ、スタートアップの環境整備に資する中長期的な課題についても引き続き検討したい。
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説明後タスクフォース委員間では、税制上の具体的な課題について議論した。
【産業技術本部】