21世紀政策研究所(十倉雅和会長)は7月26、28の両日にわたり、連続セミナー「G7後の世界と企業活動への影響について」を開催した。同セミナーは、6月の主要7カ国首脳会議(G7)の結果が国際社会と企業活動に及ぼす影響について解説するもの。第2回は、「G7後の国際関係」をテーマに、同研究所の佐橋亮客員研究委員(東京大学東洋文化研究所准教授)が登壇。会員企業幹部180名が出席するなか、G7後の国際関係について米中対立を軸に分析した。概要は次のとおり。
■ G7後の国際関係
この10年間、G7の重要性の低下が指摘され続けたが、今回、日米欧の協調とG7の意義があらためて確認され、主要7カ国が、米国を中核として協調する姿勢を世界に示すという目的は達成された。
G7は対中強硬に軸足を移したといわれるが、記者会見等での欧州首脳(英仏伊)の発言からは、中国への向き合い方で欧州と米国が明確に歩調を合わせているわけではないことがわかる。
G7声明での台湾への言及は、大きく受け止める必要はない。バイデン政権はこれまで「中国との競争」を政治的に利用してきた。その影響は経済政策、科学技術政策、多国間協力にみられるほか、主要な外交日程にも反映されている。G7が米国の同盟国で構成されていることも考慮すれば、G7声明における台湾への言及は、当然の帰結にすぎない。
また、「民主主義対専制主義」という世界観が固定化してきた。これは、G7が、中国のみならずロシアによるサイバー攻撃や選挙介入に対して問題意識を明確化したことからもわかる。
今後の国際協調のあり方については、G7で示された多国間主義が強調されていくものと思われる。
■ 米中対立の影響
米国は、過去40年間、中国に関与し、支援する方針であった。これは、中国に対する3つの期待(中国の市場化改革、中国政治の改革、国際社会への貢献に対する期待)と、米国は中国に追い付かれないという慢心に基づいている。しかし、3つの期待は失われ、台頭する中国が国際秩序や地域秩序をつくり替えるほどの強制力を持ち始めたことへの懸念から、米国の対中不信が強まった。これがバイデン政権にも影響を与えている。
米中対立は、政治にとどまらず経済、科学技術をめぐる対立でもあるため、ビジネスにも影響が及ぶ。米中対立が進展するなか、米政府内では、経済・科学技術・安全保障にかかわる政策はより一体化しつつある。また、コロナ渦によりサプライチェーンの国内回帰は、国内経済の刺激、安全保障の両面から重視されるようにもなった。バイデン政権は競争と安定のバランスを維持しようとしており、これは中間層のための外交とも整合的である。米中対立の衝突リスクが一番高いのは、台湾である。習近平政権は、台湾アイデンティティーの高まりに加え米台関係が強化されるなか、統一促進の限界を認識しており、台湾海峡をめぐる緊張は高まっている。
米中対立の流れのなか、最前線の同盟国として日本に対する米国の期待は高い。日中関係に臨む日本の姿勢にも影響を与えることになるだろう。
【21世紀政策研究所】