本連載では、米国をより深く知るため、広大な米国を構成する50州+1特別区の情報を順次ご紹介します。
13.バージニア州
この州は、初代大統領ジョージ・ワシントンの出生地であることをはじめ、建国初期を中心に、50州中最多の8人の大統領を輩出している。ここからバージニア州は「大統領たちの母」と呼ばれることもある。
南北戦争では、開戦後にアメリカ連合国(南軍)に参加。州都リッチモンドは連合国の首都となった。同市はワシントンDCから直線距離で南に150キロメートル程度と比較的近接しており、両都市間に山地等の障害がなかったこともあって、州内は両首都をめぐる攻防を軸とする東部戦線の主戦場となった。
州の南部を中心に、タバコ、果物、畜産等の農業が盛んに行われている。一方でワシントンDCに近い北東部には国防総省(ペンタゴン)が立地し、通信、IT、防衛等の産業が発展している。
政治面では、都市部で民主党が支持を固める一方、農村部では共和党が優勢である。ちなみに、直近4回の大統領選ではすべて民主党候補を支持してきているほか、現在の州知事および連邦上院議員も民主党から選出されており、州全体としては民主党がリードする状況にある。その背景には、ワシントンDC近郊で、連邦政府勤務者が多い北部の都市部人口の急増がある。一方、大統領選の翌年に行われる州知事選では、過去10回のうち、2013年を除いて、大統領選に勝利した政党の候補が敗れており、就任1年の大統領の政党の行き過ぎを牽制する役割を担ってきた。
また、ワシントンDCの主要な空の玄関口であるダレス国際空港とロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港はいずれも同州内に立地している。
14.ウェストバージニア州
アパラチア山脈西側の麓を中心とする、「山がち」な州であり、「山の州」の異名を取る。同州への郷愁を歌う歌曲「カントリー・ロード」は州歌ともされているが、歌詞に登場するブルーリッジ山脈とシェナンドー川はほぼ州内を走っておらず、どちらかといえば隣接するバージニア州の風物である。
元はバージニア州の一部だったが、同州東部は奴隷労働力を活用したプランテーションが広がる一方、西部は奴隷制に比較的頼らない小規模な農林業や鉱業を主体としていた。南北戦争をきっかけに両者の差異が顕在化する格好となり、西部は独立を宣言。1863年にウェストバージニア州として合衆国に加盟した。
米国東部最大、全米2位の産炭州であり、米国の石炭生産の1割強を担う。その3分の1以上を海外に輸出しているほか、電力の9割超を石炭火力で賄い年間850億キロワット時超を他州に純輸出している。全米6位の天然ガス産出州でもある。
大恐慌時代から1990年代までは民主党の牙城であったが、2000年ごろから共和党支持へと変わり、足元では圧倒的に共和党が強い土地柄となっている。現在、連邦下院の3議席はいずれも共和党が占める。一方で、連邦上院には中道派民主党議員のジョー・マンチン氏を送り込んでいる。同氏は、超党派合意を重視し共和党に同調した投票行動を取ることも少なくなく、50対50に割れる現上院のキャスティング・ボートを握る議員としてその動向が注目されている。
15.アラバマ州
1817年、ミシシッピ準州の州昇格に伴い同準州の東半分が分割されてアラバマ準州とされた。その後、19年に昇格して米国22番目の州となった。工業化の進展で需要が拡大する綿花の栽培に適した肥沃な土壌が広がっていたことから、「アラバマ・フィーバー」と称された大規模な入植が進んだ。こうした歴史と地理的条件の両面をとらえ、「南部の中心」を意味する「Heart of Dixie」の愛称で呼ばれることもある。
現在でも綿花は栽培されているが、生産量ではテキサス州、ジョージア州等に及ばない。ほかにピーナツ、大豆、トウモロコシ等の農産物が広く生産されている。作物を多様化せざるを得なかったのは、20世紀初頭に虫害によって綿花生産が壊滅したためである。これを記念して、エンタープライズ市には、原因となった害虫であるワタミハナゾウムシの碑が建てられた。
近年の経済・産業の中心は金融、自動車、鉄鋼等に移っており、日本の自動車メーカーも、今年稼働予定の新工場を建設中である。
【米国事務所】