経団連(十倉雅和会長)は6月16日、開発協力推進委員会(安永竜夫委員長、遠藤信博委員長)をオンラインで開催した。環境省の小野洋地球環境局長から、同省が同月15日に公表した「環境省脱炭素インフライニシアティブ」について、また、経済産業省の山下隆一産業技術環境局長から、「カーボンニュートラルの海外展開」について説明を聴くとともに意見交換した。両氏による説明の概要は次のとおり。
■ 環境省「脱炭素インフライニシアティブの概要」
2050年カーボンニュートラル実現に向けた官民による取り組みが進むなか、海外での削減を排出削減目標の達成に活用できるJCM(二国間クレジット制度)への期待が高まっている。パリ協定6条の市場メカニズムに関する詳細ルールはCOP26の最大の交渉課題となることが想定され、6条ルールの合意があれば、JCMをパリ協定における市場メカニズムの規範とする国際的な認識が深まり、JCMプロジェクトのさらなる組成につながるだろう。民間企業にとっては、海外での削減を自社の削減目標等に活用できる制度として、JCMは新たな価値を発揮できる。環境省は、JCMを通じた環境インフラの海外展開を一層強力に促進する。
具体的には、官民連携でJCMプロジェクトによってGHG(温室効果ガス)排出量の累計1億トン程度削減(最大1兆円程度の事業規模に相当)を目指す。また、再エネ、グリーン物流、廃棄物インフラ等の分野に注力する。さらに、JCM拡大のための条件を整えるべく、国際ルールづくりの主導、民間資金を含む資金の多様化、対象地域の拡大、一気通貫の支援を通じた脱炭素市場の整備に取り組む。今後、経団連とも連携して、官民総動員で同イニシアティブの実現に全力を尽くす。
■ 経産省「カーボンニュートラルの海外展開」
経済産業省では、昨年12月に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」について、重点14分野の見直し、イノベーション政策における米国・欧州との国際連携等の施策の追加など、その具体化に向けた改訂作業を進めている。
東南アジアについては、経済成長に伴うエネルギー需要の拡大が見込まれるなか、化石燃料ベースの電力が高い比率を占めているのが実態である。そこで、梶山弘志経済産業大臣は21年5月に、「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ(AETI)」を表明し、ASEAN各国の脱炭素への移行に向けたロードマップの策定や、技術開発・実証を支援することとしている。また、アジア地域は、大規模なCO2の貯留ポテンシャルを有している。昨年11月のEAS(ASEAN+3及び東アジアサミット)のエネルギー大臣会合において、わが国はアジア地域全域でのCCUS(二酸化炭素回収・利用・貯蔵)活用に向けた環境整備や知見を共有する「アジアCCUSネットワーク」の構築を提案した。今後、フォーラムの開催などを通じて発足に向けた動きを加速していく。
また、金融機関によるESG投資(環境・社会・ガバナンス対応を踏まえた投資)の潮流を背景に、気候変動、環境関連の情報開示、投資先の選別の動きも進んでいる。そこで、多排出産業における脱炭素への移行資金調達を支える観点から、今年5月、トランジション・ファイナンス基本指針を策定した。さらに今後、多排出分野を対象に、脱炭素化ロードマップを策定する予定である。JCMやCEFIA(Cleaner Energy Future Initiative for ASEAN)に関しては、技術課題を有する案件を対象にNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を通じた実証等を行っており、相手国におけるわが国の低炭素技術を活用したエネルギーシステムの低炭素化や官民を通じた制度整備に貢献していく。
【国際協力本部】