経団連は5月12日、観光委員会企画部会(今泉典彦部会長)をオンラインで開催し、観光の持続可能性の確保をテーマに、日本観光振興協会(日観振)と国際観光振興機構(JNTO)の取り組みを聴くとともに懇談した。概要は次のとおり。
■ 日観振(久保田穣理事長)
観光は、活力回復などに向けた人の重要な営みであるが、コロナ禍で厳しい状況にある。国内経済への波及効果が55兆円にも上る基幹産業としての気概を持ち、観光再生に取り組んでいきたい。
コロナ禍でその重要性が社会に浸透していないことを痛感した。そこで、観光の役割を強く発信するため、「日本の観光再生宣言」を3月に発出。地方自治体や企業など1800近くの賛同を得た。賛同者は、ワクチンの早期普及が課題という点で一致しており、ワクチンパスポート実現を含め経済界のリーダーシップを願いたい。
観光再生のキーワードは、密を避けるための「分散化」、生産性を向上する「テクノロジーの活用」、単価の引き上げによる「高付加価値化」である。
分散化に向けては、働き方の変化のなかで、ワーケーションなど、政府も支援策を出しているので、官民で推進したい。その際、地域の安心安全の担保が重要であり、山梨県の取り組みなどが参考になる。テクノロジーの活用については、引き続きMaaSの推進に取り組みたい。高付加価値化には、自然などを活かした体験型観光の推進や、高単価な宿泊施設の導入が考えられる。政府の補助金も活用し、地域資源のインフラ整備に取り組んでいくことが重要である。
■ JNTO(金子正志理事)
国際機関などは、海外旅行が2019年と同水準に戻るのは23~24年以降ととらえているが、それまでの間も、順次回復が見込まれる需要を着実に獲得していくことが重要である。
日本は観光地としての人気を維持する一方で、感染拡大国として危険視される傾向も出てきており、誤解を招かぬよう正しい情報を冷静に発信していく必要がある。また、訪日客を歓迎するマインドの醸成も重要な課題である。コロナ禍により、旅行には安全性確保や強い動機付けなどが求められるようになるとみられる。JNTOでは、不安払拭の観点から、新型コロナ関連情報ウェブサイトを公開しているほか、新型コロナ対策が一目でわかるようなピクトグラムを制作した。
また、地域の観光関係者への支援も強化しており、オンラインで海外と直接つないだコンサルティングの実施やウェブサイトの日本語化等を通じ、JNTOのノウハウと情報を国内関係者に共有している。さらに、SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも「選ばれる」観光地を増やしていけるよう、混雑対策等を講じる際には、地域環境や旅行者の多様性にも配慮することをあわせて呼びかけている。
厳しい状況が続くが、これからも思いつく限りの対策を進め、政府目標である30年訪日外国人旅行者数6000万人、その旅行消費額15兆円の達成に取り組んでいきたい。
【産業政策本部】